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49話/むく

お母さんの馬鹿ぁ〜。いつまでも小学校のときの授業参観の話なんて持ち出さないでよう。宍倉くんだって笑ってるし本当に僕、昨日からいいとこなしだよ。 お母さんに見送られて、家を出て宍倉くんと並んで歩く。 「宍倉くん、昨日はいろいろ迷惑掛けちゃって本当にごめんね」 「だから別に迷惑だなんて思ってないから気にしないでよ。俺は河合と遊べて楽しかったし、またあんな風に出掛けたりしたいって思ってるんだから」 「し…宍倉くん」 宍倉くんのキラッキラの王子様スマイルとジェントルマン発言に、僕の胸はじ〜んってなって危うく涙が出そうになった。 どこまでいい人なの宍倉くんっ。今朝だってこんなダメなポチを心配して迎えにまで来てくれたし…、はっ!そうだっ。 「宍倉くんっ!昨日、僕お風呂で眠っちゃったんでしょう?わざわざ家まで送ってくれたって、にこちゃんから聞きました。本当にありがとうっ!」 宍倉くんが迷惑じゃないって言ってくれるなら、ごめんなさいじゃなくて有り難うを言うべきだと思ったから、僕は出来るだけいい笑顔で感謝の気持ちを伝える事にした。 「いいえ、どういたしまして」 そしたら宍倉くんも、凄く優しい笑顔を浮かべてそう返してくれた。…なんだろう。スッゴく胸がぽかぽかするよ? 「ホテルにいるって言ったら、お家の人に余計な心配を掛けちゃうかなって思って、俺の家で寝ちゃった事にしちゃったから、悪いけど話合わせてね?」 「いろいろ本当にありがとっ、宍倉くん。あれ?でも宍倉くんちってこの辺じゃないって言ってたよね…?」 「そんなに河合の家と離れてないよ?河合の使ってる駅からふた駅先なだけ」 「じゃあ同じ路線電車だったりするの?」 「うんそう、いつも割と早めの電車に乗ってるから会った事なかったけど」 「じゃ、じゃあ僕も早起きしたら宍倉くんと一緒に登校出来るねっ」

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