51 / 139

50話/たいが

おおっ!?ムク犬の方から一緒に登校したいと言ってくるなんて、やっぱり昨日一日一緒に過ごした分だけの距離は近付いたのか? パタパタと尻尾を振りながら、楽しげに話し掛けて来るムク犬に、笑みを返しながら心の中で握り拳をする俺。 「ふふ…。河合が早起きしなくても、俺が少し遅い電車に乗るから大丈夫だよ?」 「だって宍倉くん、委員長のお仕事とかあるから早く登校してるんでしょう?僕ねっ。宍倉くんに迷惑掛けちゃったお詫びとお礼に、宍倉くんのお仕事手伝うって決めたの!」 おやおや、随分可愛い事言ってくれるじゃねえか…。 確かに誰もいない教室で二人だけってのは、いいシチュエーションかも知んねえなと、ほくそ笑む。 「僕じゃ大した役には立てないと思うけど、僕に出来る事はなんだって頑張るから、遠慮なく言ってねっ」 そうかそうか何でもいいのか…。 「だって僕、ポチだもんっ」 …ん? 「…河合、ポチって何の事?」 「僕ね、宍倉くんと仲良くなりたいなあって思ってるの」 おおっ!?まさかムク犬の方から告白…? 「…それは嬉しいな」 にやけそうになる顔を引き締め、平静を装いながら返事をする。 「でも僕と宍倉くんじゃお友達でもちょっと釣り合わないでしょう?だからねっ、僕の事は犬だと思って使ってください!」 「…………」 確かに俺はムク犬の事を犬扱いしていた。けれど、これからは愛玩動物ではなく、恋の相手としてアプローチをしようとしているっていうのに…。 まさか今度は、ムク犬の方が自分を犬と思えと言って来るとは。 …はあ〜っ、やっぱ前途多難だわ。

ともだちにシェアしよう!