54 / 139
53話/むく
あ、あれ…?
宍倉くんの身体が、急にガックリと力が抜けちゃったみたいに、僕にペッタリと凭れ掛かってきちゃったよ…!?ええっ、一体どうしちゃったの?
「…パトラッシュにもポチにもならなくていいよ」
ぴゃ〜あっ!?凭れかかった宍倉くんの唇がっ、みっ耳元にぃ〜っ!
「河合は河合なんだし、もう俺とはちゃんと友達でしょう?河合の気持ちは嬉しいけど、手助けならポチでもパトラッシュでもなくて、俺は河合椋っていう友達にして欲しいな?」
凭れかかっていた宍倉くんが、ゆっくりと顔を上げて僕と目を合わせながら、優しく微笑みかけてそう言ってくれた。
「…ぼ、僕…宍倉くんの友達?」
「うん」
笑みを深くした宍倉くんが僕の頭を撫でてくれる。おっきな手でなでなでされる感触が気持ちいい。
「へへっ、ありがとう宍倉くん。スッゴく嬉しい!これから宜しくお願いします」
ペコリと頭を下げた僕の顔が、ちょうど宍倉くんの顔の横をかすめた。
あ…れ…、いま何か柔らかいものが当たった気がする…?あ…れ…れ?気のせい、だよね?
「こちらこそ宜しくね。じゃあ学校着いたらアドレス交換しようか?」
「うっ、うんっ!」
うわあっ、アドレス交換!本当に友達認定だよっ?一気にポチからレベルアップだよ〜っ!木の棒からきせきのつるぎに一気にレベルアップしちゃった感じだよ〜っ!
うふふふふ…っ。
アドレス交換にすっかり気を取られてた僕は、さっきのニアミスを綺麗さっぱり忘れてしまっていて。後で思い出した時に、またもんどりうつ羽目になるんだけど、とにかく今は嬉しさでいっぱい!
そして電車は僕達の降りる駅に着いた。嬉しさでぽやぽやしていた僕は、また一斉に乗り降りする人波にあっという間に流されてしまい、電車の中に押し戻されそうになる。
きゃあああ〜っっ!
ともだちにシェアしよう!