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59話/たいが

ムク犬を挟み、お邪魔虫の九条と3人で歩く通学路。コイツがいなけりゃ、ムク犬と二人で登校出来たのにと思うとムカついて堪らない。 …ん?まてよ…、って事はコイツ今まで、毎朝ムク犬と二人で登校していたって事かっ!?九条を見ると、まさに俺がお邪魔虫だと言わんばかりの顔だ。 「今週から体育祭の準備が始まるね〜」 出遅れに苛立ちを覚える俺の耳に、ムク犬の楽しそうな声が届いた。ああ、そういや今日のHRで話し合えって担任に言われていたな。 「トーイくんとは敵同士だけど僕、負けないように頑張るからねっ」 「それはこっちの台詞さ。んで、ムクはなんの競技に出るつもりなんだ?」 仲良さ気に話す、九条とムク犬。今まで俺がムク犬を知らずにいた間に、九条はムク犬から友人としての信頼を獲ているって訳か…。面白くねえなあ。 九条が出場競技の話を振ると、ムク犬が騎馬戦に出たいとか言い出した。騎馬戦だとっ?ちっこいムク犬は当然騎手のポジションだろう。なら、馬になった複数の男どもが、ムク犬の尻を持ち上げて触り放題って事じゃねえかっ。そんなの許せるかあっ! 「…多分それは却下されると思うよ」 って、言うか俺が却下するっ! 「あ〜、そりゃ正解だな。宍倉は何に出るつもりなんだ?」 不本意だが、ここは九条と意見が合った。他の男がムク犬にベタベタ触る機会なんぞ、与えてたまるかっ。 意見の一致を見たのも束の間、九条が挑戦的にリレーに参加するよう、言ってきた。面白れえ…、喧嘩売る気なら買ってやる。そんな俺達の空気に、まるで気付かないムク犬が、九条まで応援するとか言い出すから、敵同士だと気付かせる。 まったく…、応援するなら俺だけでいいんだよ。ザマ〜ミロ九条。 腹の中で笑っていたら、何故かムク犬が九条に弁当を作ってくるとか言い出した。 はあっ?ムク犬、てめえ俺に断りもなく何言ってやがんだっ。お前の手料理なら、全部俺のものだろうがっ!九条になんぞ、付け合わせのパセリだって勿体ねえっ。 「河合、俺の差し入れの約束が先じゃない?」 そう言って牽制すれば、すかさず食らい付いてくる九条。話しているうちに、ムク犬の手作り弁当を賭けてリレーで戦う事になった。 ぜってえ負けねえ〜っ。ムク犬の愛妻弁当は俺だけのもんだっ!

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