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75話/たいが

九条との勝負の話は殆んどなりゆきだったから、体育祭の競技順までは気が回ってなかった。 だが、そういや去年のクラブ対抗リレーは、昼飯の前だったな。クラブ対抗リレーは、一位の部には特別部費が出る特典があるので、各運動部がガチで闘う。 そのため各部が先輩後輩関係なく、ガチで勝てる奴をエントリーさせる。去年俺が一年生ながらアンカーを務めたのは、バスケ部で一番タイムが良かったからだ。 だが、去年最後まで競り合ったうちの一人が九条だったとは驚いた。 三番手で渡されたバトンを受け取った俺は、とにかく前の奴を抜く事しか頭になかったから、回りの奴なんて見てなかったからなぁ。 去年の勝負は結局、陸上部の三年に胸先で負けたが、名勝負を繰り広げ大いに体育祭を盛り上げた功績で、負けたはしたものの特別部費が少し貰えた。先輩達は、そんな去年の借りを返してやるとばかりに意気込んでるから、多分今年も俺がアンカーで出場する事になるだろう。 だとしたら、九条もアンカーで出場するだろうから、別にそっちで勝負しても構いはしないが、熊谷にまでしゃしゃり出てこられるのはウゼエな…。 …とか考えている俺を、キラキラと瞳を輝かせたムク犬が見つめて来た。嫌な予感がする…。 「宍倉くんっ!去年のあのリレー、僕スッゴく感動したんだよっ。あの時走ってたのが、宍倉くんとトーイくんだったなんて…」 興奮気味に話すムク犬の犬耳はぴん!と立ち、尻尾もブンブンと振られている。 「うわあっ!それじゃ、ますますお弁当頑張って拵えなきゃ。死闘を繰り広げる宍倉くんとトーイくんとミツくん達の為に、僕思いっきり腕をふるうからねっ」 ………いつの間に決定事項になったんだ…。

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