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74話/むく

「じゃあ、食べ放題って弁当の事なのかぁ…。あ〜、びっくりしたぜ」 「…ムク先輩…食べられなくて、良かったね?」 シマくんと三葉くんが僕を見ながら、ホッとしたように言う。 「あ〜あ、むっくん食べられないのは残念〜」 も〜、だから僕は食べ物じゃないってば。ミツくんのせいで、シマくん達に心配掛けちゃったのに少しは反省してよ。 大体、どうして皆もそんなおかしな噂を、信じたりしちゃうのかなぁ?人間は食べ物じゃないって普通分かるよねえ? 「…この、無自覚おばか犬」 …ん? 「部長、いま何か言った?」 いま部長がため息つきながら、何か呟いた気がしたんだけど。 「…何でもないよ。さあ、とにかく食事を済ませてしまおう。まったく、折角の料理が熊谷のせいで、すっかり冷めちゃったよ」 「ええっ?りっくん、俺のせいじゃなくない〜?」 いやいや、確実にミツくんがヘンな噂話をしちゃったせいだよ。 食事が再開されて、皆それぞれ話しながら食べ進めるなか、ミツくんは相変わらずマイペースに話してる。 「ね〜、王子。俺もむっくんのお弁当争奪戦に混ざっていーでしょ〜?いーよね〜?はーい決定〜!」 宍倉くんはミツくんの言葉を華麗にスルー。 宍倉くん、ミツくんとは友情を深める気はないみたい…。 なんて考えてたら、真央くんが僕の方を見て聞いてきた。 「でも確かチーム対抗リレーは、毎年体育祭の最後の種目だよね。そしたらお弁当食べれるのは、体育祭が終わってからになっちゃわない?」 「…あっ!」 そうだった…。クラブ対抗リレーが、午前の部の最終競技なのに対し、チーム対抗リレーは、午後の部の最終競技。それぞれが午前、午後のクライマックスの重要な競技だけど、チーム対抗リレーだと、お昼のお弁当を賭けてのレースが成立しない事に気付いた。 あれれ?どうしよう…。 「あは〜、じゃあやっぱりクラブ対抗リレーでの勝負でいいじゃん〜。九条もサッカー部のエースだし〜、王子もバスケ部のホープで、去年も二人とも一年なのにアンカーやったじゃ〜ん?」 あ、去年のクラブ対抗での勝負…、アンカーで走ってたのってトーイくんと宍倉くんだったんだ!陸上部と最後まで、接戦を繰り広げた2チームがサッカー部とバスケ部だったのは覚えてるけど、あのうちの一人は宍倉くんだったんだ…。 「確かあれで宍倉君と九条君の人気が、一気に上がったんだよねえ」 真央くんの言葉に納得する。確かに、あのデットヒートは凄かった。陸上部のエース相手に引けをとらない二人の一年生アンカー。 「わあ…っ!じゃあ今年もあの名勝負が、また見られるかも知れないの?」 「そ〜だよ〜、むっくん。王子がいいって言ってくれたらね〜?」 みっ、見たい!!見たいよう〜っ!

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