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89話/たいが

『さあ!とうとう午前の部最大の注目競技、クラブ対抗リレーが始まろうとしています!』 放送部のアナウンスがグラウンドに響き渡り、会場の雰囲気を盛り上げる。 『今回の競技の見所はなんといっても、花形スプリンター熊谷選手を擁する陸上部に、その他の部がどれだけ食らい付いていけるかでしょう』 会場の興奮した空気に包まれて、俺達の緊張も否応なしに高まっていく。 『その大本命の陸上部の対抗馬として注目されているのは、昨年熱戦を演じました九条選手のいるサッカー部と、宍倉選手のいるバスケット部』 内側のレーンから、テニス部、野球部、水泳部、ラグビー部が並び、次いで俺達バスケ部、その隣にサッカー部、そして一番外側のレーンに陸上部がスタンバイする。 『昨年のあの激しいアンカー対決を覚えてる方も多いはず。今年もあの熱戦を是非ともまた演じて欲しい、そう願う観客がトラックに並ぶ選手達に熱い声援を送っています』 アナウンスを聞きながら、俺と九条と熊谷もそれぞれの位置に付いた。 『さあ、スタートラインに各部の選手達が並びました。スタートの合図を待ちます』 『レディ…』  パーン!! スタートの空砲の音と同時に、選手が一斉に走り出した。 スタートダッシュを決めたのはやはり陸上部だった。それを僅かに遅れてバスケ部とサッカー部が追いかけている。 最初にバトンが渡ったのは陸上部、次いで僅かの差でバスケ部とサッカーもバトンを渡す 。 バスケ部とサッカー部は並走しながら、先頭の陸上部を追いかけている。第三走者にバトンが渡ったとき、先頭の陸上部との差は殆どなかった。 3チームはその均衡を保ったまま、アンカーの俺達にバトンが引き継がれた。ほぼ同時にバトンを受け取った俺と九条と熊谷は、ただひたすら前へと全力で駆け抜ける。 俺達は横一線でコーナーを曲がり、最後の直線コースに入った。ゴールまではあと僅か。 俺は全ての力を振り絞り、前へと駆け抜けた。

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