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96話/むく
実行委員の人の訳の分からない説明に、みんなが困惑しているなか話は続いていく。
「衣装は箱に書かれている名前を確認して間違いのないようにして下さい。着方が分からない場合は実行委員が着付けます」
更に続いていく説明に、ますます困惑を募らせていく僕達を置き去りにして、実行委員の人が話を続けようとした時、兎月部長が手を挙げた。
「借り物競走に出るのに何故着替えが必要なんだ?それに…」
「それについては今から説明しますので」
言葉を続けようとする部長を遮り、実行委員の人が冷静に返す。部長は渋々といった様子で手を下ろした。
「皆さんが出場する借り物競走ですがルールが変更になりました。最終種目のチーム対抗リレーとのミックス競技として出場して頂きます。皆さんは用意された衣装を纏い動物に扮して貰います」
え!?チーム対抗リレーとのミックス競技って何!?それに動物に扮してって…、まさかコスプレってこと!?
「競技はリレー選手がコース上に置いてある箱の中から動物が描かれたカードを引き、引き当てた動物を連れて制限時間内にゴールした選手に100ポイントが与えられます。尚、100ポイントとなるのは同じチームの動物のみです。敵チームの場合は20ポイントとなります」
100ポイントって…、通常一位の選手が獲得出来るポイントが、10ポイントなのにその10倍!?
得点配分に関係ないはずの借り物競走なのに、100ポイントだなんて勝敗を大きく左右しちゃうよ!
「運良く同じチームの選手が味方チームの動物カードを引き当てればスムーズにポイントを得る事が出来ますが、敵チームに捕獲された場合は自チームのポイントから20ポイントが相手チームに渡ります。制限時間は競技開始から5分間です。敵チームの選手が自分が扮したカードを引いた場合は捕獲されないように全力で逃げて、敵チームにポイントを渡さないように頑張って下さい」
ガッターン!!
実行委員の人が説明を終えると同時に机を蹴り倒す音がして、僕の隣には真っ黒なオーラを纏う目の据わった部長がいた。
「一体これはなんの茶番だ?僕達は何も聞かされていない。いくら学校行事とは言え、何の説明もなくこんな馬鹿げた事を強いられるのは真っ平御免だねっ」
小柄な兎月部長が、自分よりずっと大きな実行委員の人を睨 めつけながらそう言った。
机を蹴倒すのはやり過ぎだけど僕も部長の意見に賛同するよ!どうしていきなり動物のコスプレをして競技に出なくちゃいけないの?
恥ずかしがり屋の三葉くんなんて涙目で倒れそうになってる。
「こ…、これは生徒会からのサプライズ企画で…、ぼ、僕達は指示された事を伝えているだけですので…」
部長の気迫に押された実行委員の人が真っ青になりながらもそう言った。
「……あの、クソ一馬…っ!」
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