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97話/たいが

グラウンドの入場口に人溜まりが見える。その人溜まりは、全員がカラフルな愛らしい衣装に身を包んでいた。 フワモコした布地で仕立てられた様々な動物を模した衣装に身にを包んだ生徒達。男子高校生にしては、みな一様に小柄な線の細い生徒達ばかりだ。…なかにはゴリラの衣装を着たゴツい生徒もいたが。 そんななかにムク犬の姿を見つけた。 ムク犬は茶色のモコモコした布地で仕立てられたノースリーブのチュニックを纏い、ふわもこの尻尾が着いたショートパンツを履いていた。 頭にはふわふわの犬耳、手にはモコモコした肉球付きの手袋、足元はモコモコニーハイブーツを履いている。 ………か、かわええ…っ! 恥ずかしそうに頰を染めて手袋をこすり合わせながら俯くムク犬の破壊力…! 今までブーイングしていた生徒達も、そのコスプレ衣装に身を包んだ一団に気付き野太い歓声を挙げた。 「…な、なんだありゃ!?」 「無茶苦茶カワイイ!!」 「もしかしてあれが狩りの動物か!?」 「うおおっ!」 「あんな可愛い獲物なら俺も捕まえてぇ!」 「ウサギ!兎最高!滅茶苦茶カワイイー!」 「いや、あの平凡な感じの猫も堪んないぞ!」 「涙目のバンビちゃん!涙をふかせてーっ」 「生意気そうな縞栗鼠(シマリス)が真っ赤な顔で睨んでるのもいいぞ!」 回りの生徒達も口々にコスプレ衣装のちびっ子たちを賛美し始める。 「うおおっ!ムク犬のあの尻!尻尾がエロいっ」 ムク犬の可愛い姿に萌えまくっていた俺だが回りの連中の声で我に帰る。畜生!!あんな可愛いくてエロいムク犬の姿を大勢の目に晒すなんて我慢出来ねえっ! さっきの競技説明では引き当てた動物を捕まえてゴールするって言ってたな。…って事は犬を引き当てねえとムク犬は別のヤツが捕まえて攫って行くってことか!? 冗談じゃねえ!あんな姿のムク犬を俺以外のヤツの目に晒すだけでも我慢出来ねぇのに、あんな可愛いムク犬を攫われるなんて許せるかあっ!! こうなったら何がなんでも犬を引き当ててぶっちぎりでムク犬とゴールしてやる!! 「可愛いなぁムク犬」 「ほーんと最高!あのまま家に連れ帰っちゃいたーい」 いつの間にか隣に来ていた九条と熊谷が俺と同じ心情を語りやがる。あのまま家に連れ帰って無茶苦茶可愛いがりってやりてえのは俺も同様だ! 何としてもレースに勝ちムク犬を搔っさらうぞ!

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