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101話/たいが

『さあ!本日とっておきのサプライズ競技、借り物競走あーんど!チーム対抗リレーミックス競技。その名も「狩り者競争」その開始時間が刻一刻と近づいて来ております。実況は放送部部長の(わたくし)猿渡、そして解説は副部長の椛島(かばしま)の二人でお送りさせて頂きます』 『副部長の椛島です、宜しくお願いします。いや猿渡さん。突然の競技変更に戸惑いの声も上がりましたが、素晴らしい競技内容に会場内の期待も高まる一方です。本当に可愛らしい動物達の姿ですね』 『本当にそれぞれの選手の個性を最大限に引き出す完璧な衣装!見事なものです。それにしてもこれだけの物を準備するのは大変だった事と思われますが、生徒会は一体このコスチュームをどうやって準備したのでしょうね』 『資金面に関しては桜木会長のポケットマネーからと言う噂ですが、しかしこのプロデュース力は見事な物です。サプライズと言いながらこの用意周到さ。これは間違いなく確信犯ですね、猿渡さん』 『流石は自分の愉しみの為ならば、如何なる非難も労力も苦にしない桜木会長らしいですね。しかし良くこんな企画が職員会議で通りましたねぇ』 『それこそが桜木会長のカリスマ性の為せる技なのではないでしょうか。色々な情報を握っている会長ならではと…おっと、これ以上は言葉にせずにおきましょう。私も我が身が可愛いですからね』 『では改めて競技内容の確認を致しましょう。まずリレー選手全員が一斉にスタート、そしてコース上に置かれた箱の中から動物のイラストが描かれたカードを一枚引きます。選手はカードに描かれている動物の衣装を着た同じチームの生徒を見つけ、制限時間内にゴール出来れば100ポイントが与えられます』 『通常の競技での最高点が10ポイントですからこれは破格の高得点ですね』 『ええ、但し獲物が味方チーム以外の選手に捕まってしまうと20ポイントが自分のチームから引かれてしまいますので、獲物達は頑張って逃げ切る必要があります』 『しかしハンター達は精鋭揃いですよ?獲物達は逃げ切れますかね』 『そうですね、確かに厳しいかも知れません。因みに獲物を間違えてハントしてしまった場合は、ペナルティとして50ポイントがマイナスされますので、焦って獲物を取り違えないように気を付けて下さいね!』 『…あ、ここで新しい情報が入って参りました。獲物達は一度だけお願い権と言うものを使うことが出来るそうです』 『はて?お願い権とは一体どんなものなのでしょうか』 『はい。もし味方以外のチームの選手に捕まってしまった場合に“逃がして欲しいとお願いする権利”だそうです。このお願いを聞くかどうかはハンターの気持ちひとつですが、一度逃がした獲物は二度と捕まえる事が出来ません』 『なかなかテクニックが要りそうな権利ですねぇ。この権利を行使するさいは上目遣いでお願いすると、かなりの高確率で逃げる事が出来そうです』 『それは効きそうですね!一瞬の躊躇(スキ)を見逃さない事が勝利への鍵かも知れません』 ……さっきから放送部の連中の、私情を交えまくったハイテンションなアナウンスが場内に響いている。 「ふうん、お願い権ね。面白そうじゃねえか」 アナウンスを聞いた鷹取がほくそ笑んでいるが、お前の狙いの小西は味方チームだからお願いされる事はねぇだろうが。 「うふふ。むっくんに涙目でお願いとかされたら迷っちゃうかも~」 「(まど)ったとしても、掴んだら俺は絶対に離さない」 真剣な九条と愉しげな熊谷がそう言うが、同じチームの俺がムク犬からお願いされる事はないな…残念…。いや、余計な事は考えるな俺! …あれ?そう言や、なんで熊谷がここにいるんだ? 「おいまて!なんで熊谷(オマエ)がいるんだ?陸上部はチーム対抗リレーには出場出来ないはずだろう?」 「だって~、これってもうチーム対抗リレーとは全然違う種目になっちゃったしぃ~、俺が出ても問題ないじゃ~ん?だから代わって貰っちゃった☆」 「代わって貰っちゃった☆じゃねぇ!何勝手な事してやがる!」 まったく悪びれる様子のない熊谷に、思わず口調が荒くなっちまう! 「堅いことは無し無し~!俺が出た方が盛り上がるよ~。ねぇ会長、いいでしょ~」 桜木の方を見て熊谷はそうほざく。そして熊谷と同類の桜木は案の定…。 「まあ、確かに熊谷の言うことも一理あるし、参加を認めよう」 何が一理あるだぁ!テメーは面白けりゃなんでもいいんじゃねぇのか!? 「あと5分で競技を開始します。選手の皆さんはスタート地点に集まって下さい」 そうこうするうちにスタート時間を報せる係員の声が掛かる。それぞれの思惑と欲望を乗せた最終レースの開始は、もう目の前に迫っていた。

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