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102話/むく
とうとう競技が始まっちゃう。獲物役の選手達はグラウンドの真ん中に集められ、改めて実行委員の人の説明を聞いていた。
「先程説明をした通り、敵チームに捕まってしまった場合は交渉する事が可能です。交渉方法は各自の自由ですが金銭での取引等は禁止とします」
さっき説明のあった“お願い権”
またよく訳の分からないルールが登場した。
確かにお願いして逃がして貰えるなら嬉しいけど、お願いしたからって100ポイントが掛かってる勝負を捨てる人なんているの?
「なお、捕まえる側、捕まる側ともに誰が味方で誰が敵か見た目では分かりませんので、チームカラーのハチマキをハンター達は額に巻き、獲物達は同じチームカラーのリボンを獣耳に結んで貰います」
あ、確かに知らない人だと誰が同じチームか分からないから捕まっていいのか逃げた方がいいのか分からないもんね。
でもなんでリボンなの?僕達も普通にハチマキで良くない?そんでもって結ぶ場所まで指定されるって何のこだわりなのー!?
きっと全部カズ先輩の仕業だよね。もう怒るの通り越して呆れちゃいそうだよ。
でも、諦めにも似た脱力感に襲われる僕と違って、部長の怒りはどんどん増していっているみたい。きっと体育祭が終わったあと死ぬほど部長に怒られるんだろうなぁ…カズ先輩。
…って言うか、カズ先輩は部長に構って欲しくてこんな手間暇かけたんじゃないかなぁ。
カズ先輩の部長への気持ちはちょっと屈折しているから厄介なんだよねって、前に真央くんが言ってたっけ。でも僕達まで巻き込むのはやめて欲しいよ…はぁ~。
なんて事を考えているうちにスタート地点にはハンター達が続々と集まってきていた。
流石は花形競技に選ばれる人達だけあって皆な足が速そうだ。ハンター達の中には当然、トーイくんコウ先輩、それに何故かミツくんもいる。…なんで?
さらに諸悪の根源、カズ先輩の姿もあった。やっぱりカズ先輩も参加するんだ、あう…隣の部長の纏う空気が一層重くなった気がするよ~。
そんな精鋭揃いの選手達の中に、僕と同じチームカラーの赤いハチマキを絞めた宍倉くんの姿を見つけて、何だか少しホッとする。
……どうせなら宍倉くんが僕を捕まえてくれたらいいのになぁ…。
……え?
…いま僕、なんて思った?
…うっ、ううんっ!!ホラ、宍倉くんなら同じチームだから逃げないで済むからねっ!
そうだよっ!宍倉くんに捕まえ欲しいなんて…!
そんな事、思ったりなんてしてないもんっ!!
「ちょっ、ムク犬いきなりどうしたの?」
「むっくん緊張してるの?」
ぶんぶん首を左右に振る僕を、みんなが心配してきたけど僕は何でもないって言って、誤魔化した。
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