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103話/たいが

「それでは競技を開始致します!ハンター役の選手達はスタート地点に並んで下さい!」 進行役の生徒の声にスタートラインに立つ。俺の両横には九条と熊谷が、すぐ後ろには桜木と牛島がいる。鷹取はと見回すと一番後方にいた。…やる気あんのか?アイツ。 「では、位置について…、用意…」 『パアーンッ!!』 俺達の準備が整うのを待ちかねたように、合図が鳴らされた。 『さあっ!とうとう期待の最終レースの幕が上がりましたっ!ハンター達は一斉に、コースに置かれたカードボックスに向かって走って行きます!』 俺達は100m先に置かれた箱に向かって、全力で走って行く。俺と九条と熊谷、それに桜木が併走し、少し遅れて牛島と他の選手達が続いている。 カードが入った箱が並べられた机の前に、俺と他の3人もほぼ同時に辿り着く。 俺は真ん中の箱へ手を突っ込み一枚のカードを取り出し、描かれた動物を確認した。 ーーそして俺は獲物達に向かって猛ダッシュを始めた。 俺がハントする獲物は唯一人(ただひとり)、ムク犬だけだ! 『最初にカードボックスに辿り着いたのは、宍倉、九条、熊谷の3名!それに桜木会長の姿もあります!流石はクラブ対抗リレーの勝者達、そしてその選手達に引けを取らない桜木会長も流石です!』 『各選手がカードボックスに手を入れます。果たしてどんな獲物を狙う事になるのか!?』 俺は獲物達の群れに向かって、死に物狂いで走って行く! あいつらが何のカードを引いたのかは分からないがムク犬には指一本触れさせはしねぇ! 九条でも熊谷でも桜木でも、他のどんなヤツらでも、ムク犬は渡さねぇ!! 「ムク犬ーーっ!!」 俺の声に俯いていた顔を上げるムク犬。そしてその瞳が俺を(とらえ)る。 俺はムク犬に向かって手を伸ばした。 ムク犬もフワモコの手袋を着けたその手を、俺に差し出してくれた。 俺がその手を取ろうとした瞬間ーー。 「ムクは渡さないっ!!」 俺の後ろから現れた九条がムク犬の腰を掴み、抱え上げた。

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