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105話/たいが
ムク犬に届き掛けた手を遮って、俺の前からムク犬を攫って行った九条。
ヤツを追いかけようと、駆けだす俺の体操服の上着を誰かの手が掴んだ。
驚いて振り向くと、青いリボンを犬耳に結んだヤツが俺の上着の裾をしっかりと握っている。
「ちょっ…、離してくれないか?君はB組だろう?」
「…王子さま…。犬のカードをお持ちなんですよね?赤いリボンの子は九条君が連れて行ってしまったので、僕を連れて行きませんか?ポイント相殺になりますよ」
なにやらモジモジしながら上目遣いでそう言ってくる。……なんだコイツ、面倒くせぇ…!今は一刻も早く、ムク犬の元に駆けつけねぇといけねぇってのに!
「いや、そう言うのは良くないよ。君はちゃんと同じチームの選手を探してゴールをしなさい」
怒鳴りつけてやりたいが、全校生徒の前で王子キャラを崩す訳にはいかねぇし…。
「王子さまの傍にいるので誰も僕を捕まえには来ません。…連れて行って貰えませんか?」
潤んだ瞳で見上げて、そう懇願してくるソイツ。こうしている間にも九条君との差は開いて行く。
くっ、仕方ねぇ!俺はソイツを俵担ぎにすると、猛スピードでムク犬と九条を追いかけた。
「ちょっ、王子さま…っ!この抱き方は違いますー!」
「黙ってないと舌を噛むぞっ!」
イラつく気持ちのまま、言葉遣いも荒くなるが構ってらんねぇ。
余計な荷物を抱えている分、スピードが出ないまま九条の背中を追っていると、ムク犬の切羽詰まった声が聞こえてきた。
「お願い!トーイくんのお願いもあとで何でも聞くから今は離して-!」
…っ!ムク犬が例の”お願い権“を持ち出している!
「…お願い…。何でも…?」
コラーっ、ムク犬!お前はまた何、考えなしに口にしてるんだ!
ムク犬の言葉に九条が動揺しているのが分かる。お前、惑 わないんじゃなかったのかよっ!
「うんっ!僕に出来ることならなんだってするよ!だから…」
ムク犬がまた余計な事を口走りそうになったその時ーー。
「ムク犬は返して貰うぞっ!九条!」
俺は動揺した九条の隙を見逃さずにムク犬を奪い返した。
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