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113話/むく

「さて、取りあえず荷物を部屋に置いたらお昼を作るよ。部屋割りだけど、シマと三葉が二階の一番左奥の部屋、ムク犬と真央が向かいの部屋で、その隣を僕と宍倉で使わせて貰う事になったから」 新幹線で一時間余りの所にある、高原の避暑地での別荘合宿!待ちに待ったこの大イベントに僕たちの気分は、きっと尻尾があれば千切れちゃうくらい上がりきっている。 宍倉くんちの別荘での合宿なんてビックリするような話が飛び出したのは、期末テストも終わり少しずつ近づいてくる夏休みの気配に、学校中が浮き足立ち始めた頃だった。 「ねえ、河合。夏休みって予定ある?」 期末テストをなんとか乗り越え、苦手な数学も宍倉くんに教えて貰ったおかげで赤点も免がれて、あとは夏休みを待つばかり! そんな浮き浮きした気分で過ごす僕に、そう宍倉くんが聞いてきた。 「夏休みの予定?」 「そう。家族旅行とか行くの?」 「家族旅行って言うか、お祖父ちゃん家には家族で遊びに行くよ!あとは調理部の皆で遊びに行ったりとか、いっくんとにこちゃんとお出掛けしたりとかかなぁ~」 お祖父ちゃん家まではそんなに遠くないし、別段田舎って訳じゃないから里帰りって感じにはならないんだよね。せっかくの夏休みだから、どこか遠くに出掛けたりとかもしてみたいんだけどね。 「じゃあさ。河合さえ良かったらうちの別荘に来ない?」 「ええっ!別荘!?」 「割と有名な高原の避暑地に、うちの祖父が持っている別荘があるんだ。新幹線で一時間くらいだし、観光地でもある所だからレジャー施設も充実してるし、退屈せずに済むと思うんだよね」 高原の避暑地の別荘!? またまたテレビみたいな台詞が飛び出してきたよー!宍倉くんのお家って本当にお金持ちなんだなぁ…。 「河合の都合さえ良ければ、一週間くらい滞在してたっぷり遊ばない?」 「…ほっ本当にいいのっ…!?」 高原の避暑地の別荘で、宍倉くんと遊べるなんて嘘みたい!嬉しいっ!! 「うんっ!行きたい!…、あっ、でも…」 夢みたいなお誘いに、すぐに頷きそうになっちやったけど、友達と二人っきりで一週間の旅行ってなったら、やっぱりお父さんとお母さんの許可がないと駄目だよね。 スッゴく行きたいけど、お母さんたちに話をしてからじゃなきゃ返事はできないや…。

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