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114話/たいが

ムク犬と二人きり、サマーバカンスを別荘で楽しむ計画は、過保護なムク犬兄により水泡に帰した。 敗因は真面目なムク犬の性格を、またも見誤った俺の杜撰(ずさん)さだろう。 自分が放任されて育ったせいで、家族の心配とか、そう言った一般家庭では当たり前の感覚が、どうも俺には欠けている。 正直、高校生なんだからダチとちょっと旅行に出るなんて、左程心配される類のものだと思わなかったからな。 だが家族に溺愛されているムク犬を一週間も外泊させるなんて、あのブラコン気味の兄貴が許可するはずは無かったんだよなあ…。 実際、母親や姉は賛成してくれたらしいのだが、父親と兄貴が大反対だったらしい。 なので俺は苦肉の策として、調理部の合宿と言う建前を持ち出してみた。 祖父さんの別荘がある場所は観光地としても有名で、レジャー施設は勿論、名高いホテルやレストラン、カフェなども多数ある。 そこで俺は、以前小動物達と約束したビュッフェでの食事を、避暑地で行うのはどうかと持ち掛けてみたのだ。 あの避暑地にはうちの系列のホテルやレストランもあるから、いくらでも融通は利く。 朝食は軽く作って、昼はカフェやレストランの食事で見識を広め、夜はバーベキューやちょっと豪華な食事を皆で作る。 そんなプランを話すと、ムク犬は尻尾が千切れんばかりに喜び、調理部のメンバーに話をしにいった。 この話には小動物達もすぐに食いつき、結局ムク犬と過ごすはずの別荘でのサマーバカンスは、調理部メンバー全員を含めた合宿へと姿を変えたのだった。 はぁ~。 「宍倉、なに溜息吐いてるのさ。キッチンの様子を見たいからさっさと案内してよ」 「……」 どうにかして、ムク犬とのサマーバカンスを実現したかったとは言え、結局鉄壁のガードマン卯月を身近に置くこととなってしまった訳で…。 さっきの部屋割りも、決めたのは俺ではなく卯月だ。 当然の事ながら、俺がムク犬と同室になる事は叶わず、せめて俺だけでも一人部屋になればムク犬を連れ込めると思ったが、そんな俺の下心を簡単に看破した卯月と同室にされてしまった。 (なり)は小さいのに、妙な迫力のある卯月には逆らえず、結局卯月の言うがままになってしまうのだ。…俺、ホントに族長だったのかな…?自信なくなってきた。 「うわぁ~。キッチンも広~いっ!」 「凄いね~、この調理台大理石だよ。パン生地とか()ねやすいよねぇ」 「コンロが六口もある。店の厨房みたいだな」 「オーブンでかっ!これ豚が丸々一頭入っちゃうんじゃないか!?」 「冷蔵庫もおっきーい…」 キッチンに案内すると、あれこれと興味津々に小動物達が見廻している。やっぱり調理部だけあって、調理場の設備を楽しそうに見て喜んでいた。

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