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115話/むく
「設備には全く問題なさそうだね。じゃあ、昼食作りを始めようか」
「冷蔵庫の食材は好きに使って下さい。補充は管理人に連絡すればすぐにやって貰えますから」
別荘のスゴーく立派なキッチンの設備に感動している僕たちの横で、宍倉くんが太っ腹な事を言い出してた。
「有難いけど、本当にそこまで甘えていいのか?」
部長の言うことはもっともで、今回の合宿は宍倉くんのご招待ってことで別荘の宿泊費用は勿論、食材費も宍倉くんが出してくれることになってるんだ。
「招待したのは俺ですから。でもその代わりと言っては何ですが、俺は家事が苦手なので皆さんに甘える事になります。ですので、要望があれば気にせずに何でも言って下さいね」
ニッコリと王子様スマイルの宍倉くんに押し切られこの話はここで強制終了。
なので、僕たちは簡単にパスタとパン、サラダとスープのお昼ごはんを手分けして作ることになった。
食材の切り分けは皆でやって、カルボナーラのソース作りは部長が、サラダは真央くんが、スープは僕が作る。シマくんと三葉くんはバケットを切り分けて、ドレッシングを作ってくれる。
茹で上がった麺を炒めた具材とソースに絡め、スープをよそってサラダとバケットを添えればお昼ごはんの出来上がり!
別荘に揃えてあった高そうな食器を使わせて貰ったらスゴーくお洒落!それを別荘の立派なダイニングテーブルに運んで皆で座る。いつも学校の調理室でやっている事なのにいつもとは全然違って見える。
「立派な食器によそうと、簡単な料理も豪華に見えるねぇ」
真央くんが言うとおり、何だかお料理の腕が上がったみたいに錯覚しちゃいそうだ。
「料理の方も食器に負けていないと思いますよ?」
なんて、宍倉くんがまた僕たちを喜ばせるようなことを言ってくれる。今日も宍倉くんはジェントルマンないけめんです!
食事を終えた僕たちは与えられた部屋で:荷解 きをしてから、近くを散策することになった。
「うふふ。まさかこんな素敵な所で夏休みを過ごせるなんて夢みたいだねっ、真央くん!」
「そうだねぇ。宍倉くんちってお金持ちだって噂はあったけど本当だったんだねぇ」
「うん、ホントに凄いよね。テレビでしか観たことないような避暑地に別荘を持ってるとか別世界だよねー」
「さすがは宍倉王子様ってとこだねぇ」
僕たちはお喋りしながら持ってきた服をクローゼットに仕舞っていく。
「でもそんな王子様が、なんで調理部の合宿をセッティングしてくれたんだろうねぇ」
うん、そこは僕も疑問に思ってたんだよね。
最初は僕だけを誘ってくれたけど、いっくんとお父さんが二人だけで旅行するのを反対したから、せっかくのお誘いを断らなきゃいけなくなりそうになったんだよね。
そうしたら宍倉くんが、普段からお世話になってる調理部の皆も一緒にって誘ってくれて。
しかも別荘の厨房を好きに使って料理出来るようにって、食材の手配までしてくれて。
いくら何でも甘えすぎだから食材費くらいは出すって皆で言ったんだけど、管理人さんが趣味でやってる畑で採れた野菜とかを補充するだけだからとか言われて、受け取って貰えなかったんだ。
「ホントにな~んで宍倉王子は、ここまで良くしてくれるんだろうねぇ。ムク犬?」
「あ、部長。もう荷解き終わったの?」
部長がひょっこり顔を覗かせて、僕たちの会話に入ってきた。
「ああ、シマと三葉も終わらせてもう下で待ってるよ」
「わっ、じゃあ急がなきゃ!部長すぐ終わらせて行きます」
でも慌ててた僕は、部長が投げかけてきた言葉をそのままスルーしてしまったんだ。
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