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第123話/むく

宍倉くんに案内されて着いたのはテニスコートが10面以上もある綺麗な屋外施設だった。 コートではすでにプレーを始めてる人達の姿が見える。僕も早くやりたい~! テニスラケットとシューズをレンタルしてから更衣室まで行き、テニスウェアは持っていないのでそれっぽいスポーツウェアに着替える。 「ムク犬、そのウェアも可愛いね。それも姉上の手作りかい?」 「…はい」 スポーツ施設が多いと聞いてシンプルなスポーツウェアを用意していたのに、そのウェアもにこちゃんによってすり替えられていた。 ちゃんとスポーツウェア用の生地で仕立てられたそれは僕にピッタリフィットしていて、スポーツ用の生地は扱い難いって言ってたのに、こんなに綺麗に仕上げちゃうなんてにこちゃんの服飾への情熱に敬意を払いたくなっちゃう。 …ただしっ、普通のデザインならね! 前身頃全体にデザインされたワンコの切り替えがスッゴく目立つし、そのうえショートパンツにはワンコのシッポが付いていたんだ! なんでスポーツウェアにシッポ?!カズ先輩と云いどうしてケモシッポにこだわるのー?!訳わかんないよぅ…。 さすがにスポーツウェアだからオプションのシッポは取り外し可能だったので、モチロン取り外したよっ! なんでか皆からガッカリした顔をされたけど、ワンコシッポつけてテニスなんてどんな罰ゲームだよぅ…。断固拒否するよっ! 着替えを終えて、予約してあるコートまで歩いて行くと右隣のコートには大学生らしい女の人達が既にプレイを始めていた。 僕達が隣のコートに入ると、女の人達の視線が僕達の方へ吸い寄せられるように向けられた。 その視線の先にいるのは、宍倉くんとトーイくん、そしてカズ先輩とコウ先輩、それにミツくんの5人。 僕達はすっかり慣れちゃってて忘れがちだけど、5人共相当なイケメンだもんね。 お姉さんたちが見惚れるのも無理ないや…。 宍倉くんが迎えに来てくれて駅まで歩いた日を思い出しちゃうなぁ。 あの時も宍倉くんとトーイくんのイケメン2人に周囲の女子高生やOLのお姉さんの視線が釘付けだったっけ…。 その時イケメンが集まるとその威力は倍ではなく二乗になるって学んだんだよね。 今日はイケメンが5人もいるんだからその威力は一体どのくらいになるんだろう?取りあえず自分たちのゲームを忘れるくらいの威力はあるみたい。 お姉さんたち、プレイしないと時間とお金が勿体ないですよー!と思わず心の中で呟いてしまう僕だった。 試合はワンセットマッチで行う事にしたので、まずはミツくんとシマくんチームVSコウ先輩と三葉くんチームの試合と、僕とトーイくんチームVS宍倉くんと真央くんチームの試合が行われることになった。 カズ先輩がミツくん達の、部長が僕達の試合の審判をやってくれる。 ジャンケンの結果、宍倉くん達がサーブを僕達がコートを取った。 コートに入り、トーイくんが後衛に僕が前衛につくと、宍倉くんがサービスラインに立った。 真央くんは僕と同じ前衛に位置取りしている。 宍倉くんの長身から繰り出されたサーブは、サイドラインギリギリを打ち抜いてきた。それを俊足のトーイくんが追いついてリターンする。 すかさず後衛に入った宍倉くんがフォアハンドでトーイくんの足元を狙って打ち返した。 トーイくんは落ち着いてステップを踏みバックハンドで反対側に打ち込むけど、回り込んだ宍倉くんが相手コートへとまた打ち返す。 物凄いラリーの応酬に隣のコートのお姉さんたちから、黄色い声援が送られてくる。 やっぱりテニスまで上手いイケメンの破壊力は相当なんだね。確かに二人ともスッゴく格好いいもん! でもね。あんなに早くて重そうな打球は僕や真央くんじゃとてもボレーで返せないし、なんかこれってもうダブルスじゃなくて二人(シングル)の試合みたいになってない? 物凄いスピードで続けられるラリーに僕と真央くんは、まったく手を出せずにただポツンとコートに立っているしかない。 ********* 因みに姉作ウェアの上着には取り外し出来るパーカーも付いてます。モチロン犬耳はマスト装備(´ ˘ `๑)

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