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第125話/むく

宍倉くんとトーイくんの激しいラリーは卯月部長の介入によって終わりを告げた。 ボールが直撃しそうになったのはちょっとビックリしたけど、怪我もしなかったしあのまま試合(ダブルス)を続けてもよかったんだけど、部長が許してくれそうもなかったから口出しはしなかった。 …って言うか、あの勢いで飛んできた打球をボールで撃ち落とす部長のポテンシャルが怖い…。ストロークの速度って100㎞越えるって聞いたことあるよ?神業すぎる! 宍倉くんとトーイくんへの制裁打球も物凄かったし、やっぱり部長って最恐だ…。 一見華奢に見える部長だけど、実は柔道の有段者だし重い中華鍋だって片手で軽々振っちゃう細マッチョなんだよねぇ。 ちょっとしたアクシデントもあったけど、そのあとは僕と部長チームとコウ先輩と三葉くんチーム、真央くんとカズ先輩チームとシマくんとミツくんチームが試合をして丁度利用時間が終わった。 この後の予定は観光客向けのお店が立ち並ぶ目抜き通りでお昼ごはんを食べる事になっている。 美味しいお店がひしめき合う通りでも生え抜きのお店を予約済みなんだっ。う~、楽しみぃ! 調理部ならば舌の経験値を上げるのは大切な事!って訳でガイドブックやネットを調べまくって食べに行くお店はみんなで厳選しまくって予約をいれたんだよねっ。 避暑地(ここ)にいる間はお昼ごはんは殆ど外で食べることになってるんだっ。 高校生の僕達には過ぎた贅沢なんだけど、宍倉くんのおかげで合宿でかかるはずの費用が殆ど要らなくなったから、将来への先行投資ってことで大奮発したんだよ! 宍倉くんは昼食(その)費用まで出す気でいたみたいだけどそこまでして貰う訳にはいかないよ! 調理部での食事のお礼としては釣り合ってなさ過ぎるもん! もともと調理部での食事はビュフェランチと引換のはずだったから、避暑地での合宿に話が膨らんだ時点でもう釣り合いは取れてないんだけど…。 宍倉くんにお世話になりっぱなしなこの避暑地の合宿だけど、話を貰ってからホントにホントに楽しみにしてたんだー! 大好きな調理部のみんなとそれに宍倉くんとも一緒に一週間も過ごせて、料理に関わるいろんな事を体験出来るだなんて本当に宍倉くんには感謝しかないよっ! …だけども、ホントになんで宍倉くんはこんなに良くしてくれるんだろう? いくら調理部の料理を気に入ってくれたからって言っても、宍倉くんなら調理部での料理なんて目じゃないくらい凄い料理を食べられるだろうになぁ…。 宍倉くん、まえに調理部の料理は家庭的な味って感じがして好きだって言ってくれたっけ。 家庭的な味かぁ…。 そう言えば宍倉くんって一人暮らししてるって言ってたなぁ。家事は苦手でご飯も外食とかケータリングばっかりだって。 それじゃ確かに家庭的なご飯が食べたくなるのかも。 あっ、いいこと思いついたぁ! 僕がたまに宍倉くん家にご飯作りに行くのはどうだろう?そしたら宍倉くんに甘えすぎた分をお返し出来るし、家事なら僕の得意分野でこれこそポチとしての腕の見せ所じゃない? 宍倉くんは家庭の味が味わえて、僕は好きなことで役に立てる! これぞウィンウィンの関係だよね!僕ってあたまいい~! なのに、この話を更衣室でしたら宍倉くんを除いた全員から凄い勢いで止められた…! なんでぇーっ?! ********* 打球をボールで撃ち落とすなんて実際には多分無理(⁎˃ᆺ˂)あくまでふぃくしょんと云うことでご容赦クダサイ!

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