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第127話/むく
着替えを終え目抜き通りのお店へ移動しようとした僕達に女の人達が声を掛けてきた。
あ…、この人たち隣のコートでプレーしてたお姉さんたちだ。
「こんにちは~、さっきのプレー隣で観てたんですけと凄かったですぅ。テニスとってもお上手なんですねぇ」
「もしかしてテニス部なんですかぁ?」
「私達S大のテニスサークルなんですよ~」
「良かったら午後から一緒にゲームしませんか?」
「テニス教えてくれると嬉しいなぁ」
お姉さんたちは僕達…って言うか、カズ先輩とコウ先輩、それにミツくんとトーイくんと宍倉くん達だけに話し掛け、瞳をキラキラさせながら上目遣いで5人を見てる。
「ごめんねぇ~。俺達いまから食事に行くんだ。午後からは別の予定を入れてるからテニスはお終いなの」
「あらぁ、残念」
「ねっ、それなら一緒に食事に行きません?」
「賛成!私達去年もここで合宿したから美味しいお店いろいろ知ってるんですよ~」
ミツくんがやんわりと断ったけどお姉さんたちは引き下がらない。
「俺達もう予約してるからね。店探しは大丈夫なんだよ~」
「え~!なんていうお店なんですかぁ?私達もそこにします」
お姉さんたちは尚も食い下がる。
「あ~、その店予約なしじゃ入れないから無理だと思うよ~」
お店の名前を聞いて引き下がるかと思いきや、今度は午後の予定を聞いてきた。その諦めの悪さにミツくんの笑顔が引きつりそうになったとき、部長が横から口を挟んだ。
「悪いが僕達は部活の合宿中だ。部外者に立ち入られるのは迷惑だよ」
不機嫌さを隠しもしない部長の言葉に、イケメンしか視界に収めていなかったお姉さんたちがびっくりした顔で部長の方を見て、暗黒オーラを纏った美少年にビビっている。
合宿中ならナンパなんてせずに真面目にテニスしてろって、何気にお姉さんたちをディスってる…?うぅ部長が黒いぃ…。
「そうですね~。部長、では早く行きましょうか~。あ、おねーさんたち。俺達テニス部じゃないし、みんな高校生だから~。ナンパは3年後くらいにお願いするね~」
「こ…、高校生」
「年下…?」
「うそ…。てっきり同い年くらいだと」
驚くお姉さんたちを残して僕達はようやくお店へと向かうことになった。
うーん…。今更だけど、このイケメン5人衆 で人が溢れる通りを移動するのってもしかしなくてもスッッゴい人目を引くんじゃない?
さっきのお姉さんたちの食い下がり方から推測出来るように、観光地での開放感で結構気軽に声を掛けてきそうな気がする。
果たして僕達は無事に目的地へ到着する事が出来るのかな?
…ちょっと不安。
僕の心配したとおりお店に着くまでイケメン5人衆は注目の的だった。
逆ナンに遭うことなんと六回。
その度にミツくんがやんわりと、トーイくんが爽やかに、カズ先輩が硬い口調で、コウ先輩がキッパリと、宍倉くんは王子スマイルなのにどこか寒さを感じる笑顔で断っていた。
それでも諦めない人達には暗黒部長が降臨して、蜘蛛の子を散らすようにいなくなったよ…。
お店に着いてからも、イケメン達は店内のお客さんと従業員のお姉さんたちの視線を一身に浴びてます。
タイプの違うイケメン達の誰が好みかとか声を抑えて話してるのが聞こえてくる。
聞くとはなしに囁く声に耳を傾けるとカズ先輩と宍倉くんに人気が集まっているみたいだ。
避暑地だからかセレブ感のある2人が人気なのかな。
もちろん他の3人も男前とか爽やかとか色気があるとかなんとか。
あ、男の人が部長を見て頰を染めてる…。
部長って黙ってさえいれば儚げな美少年だからなぁ、学校でも密かに人気あるもんね。
本人に知られたら鉄拳制裁されるからホントに密かになんだけど。
そんな周りをものともせずにいるのは当事者のイケメン達とフルメタルハートの部長といつもマイペースな真央くん。
僕とシマくんと三葉くんはちょっと落ち着かなくてソワソワしちゃう。
『ね、やっぱりあの紅茶色の髪の人が一番素敵』
『うん。王子様フェイスよね!どことなく気品があるって言うかー』
隣から聞こえてきたヒソヒソ声のお姉さん達はどうやら宍倉くんがタイプのようです。
うんうん!宍倉くん格好良いよね!今日のテニス姿だってスッゴく様になってたし。
でもね!宍倉くんは見かけの格好良さはモチロンだけど、それだけじゃなくって優しいし頭も良いし運動神経もバツグンだしそのうえ物知りだなんだよー。宍倉くんのことなら僕たくさん知ってるんだよっ。
お姉さんたちに妙な対抗心が芽生えちゃう僕。すると今度はお姉さんたちは僕らの事を話始めた。
『でも一緒にいるあの小さい子達どういう関係なのかしら?』
『親戚の子供とか?』
し…、親戚はともかく子供って!僕と宍倉くんは同級生だよー!
そりゃあイケメン組と僕達じゃ全然タイプが違うし友達にも見えないかもだけど!
でも!僕は宍倉くんの友達だもん!
こんな素敵な合宿を企画してくれるくらい僕たちは仲良しなんだからねーっ。ふんっだ!
…あれぇ?
なんで僕こんなに怒っているんだろう…?
…ヘンだなぁ。なんだか避暑地 に来てからモヤモヤしたりイライラしたり、普段と違う僕になっちゃってる気がする…。
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