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3.君と、恋がしたい①
コピー機の雑音がガーガーと、生徒たちのおしゃべりがガヤガヤと煩い売店で、俺はレジュメのコピーを取りながら少しだけ、上目で名木を睨むようにする。
「なあ、名木」
「なんだ」
名木は出会った当初からずっと、平常ではつらっとしている。通り掛りの女子や男子にまで『おう』とか『名木くん』だとか声をかけられては手を振り返している。やっぱりこのエリートくんは人気者なのだ。怠惰で堕落した俺とは別次元の人間だ。そんな人間が……やっぱり俺をかわいそうな人間だと、そう思っているのだろうか。
「お前、俺と喋ったの今日が初めてだよね」
「ああ、そうだな」
「それなのに、どうして俺のこと『繊細な人間だ』なんて言って庇ったりしたの」
知っていた、と言えよ。俺が阿須間家の落ちこぼれで、いつも兄ちゃんと比べられてばかりいた負け犬だと知っていた、と。思ったがしかし、名木の返答は思いもよらないものだった。
「君の絵を、初めて見たのは中学三年の時だった」
「えっ」
俺の絵を、見た? そりゃーさぞかし笑えただろう。中学生の時と言ったら俺もまだ真面目にがむしゃらに絵に立ち向かって、いつか兄ちゃんに追いつこうと必死になっていた時期だったから。それでもそのころからすでに俺は親に見放されていて、親は兄ちゃんしか構うことをしなくて俺はいつも蚊帳の外で、そんな俺が中学三年生のコンクールに出した絵のタイトルは。
「『家族』という絵だった」
「……」
余計なことまで覚えていやがるエリートくんだ。やっぱり嫌な奴じゃないか。俺は自然とその場で俯き、顔に暗い影を落とす。嫌な思い出だ。思い出したくもない黒歴史。
「絵の中の『家族』は、皆で笑い合っていた。それなのに何故か……俺には寂しく、切ない絵に見えた」
「名木、その話はもう」
「君の絵は、俺の心を突き動かしたんだ。洪水のように俺の身体に『心』を呼び起こした」
「名木、」
「それ以来俺は、ずっと君の絵を」
「名木!!」
ちょうどレジュメの最後のコピーが終わったから、俺はコピー機から四枚ずつコピーしたレジュメを乱暴にむしり取って、その場で名木を見上げることもできずに、しかし名木に怒鳴りつける。
「そりゃあさぞかし、俺のことが『かわいそう』だっただろ! だってその絵も同級生に負けて銀賞止まりだった!!」
「唯月? 確かに君の絵は銀賞だった。でも俺には、」
「『俺には』なんだよ、一番かわいそうで心が動いたってか!? お前みたいなエリートに、俺の『かわいそう』が分かるかよ!!」
「唯月、待て、」
「煩い! コピーくれたことには感謝するけど、お前はやっぱり嫌な奴だ! テニサーにも、これっきり来なくていいから。『友達』の約束も解消する!!」
「唯月……あっ」
何か言いかけた名木を無視して、俺はサークル部屋に向かってレジュメを持って走り出す。もう、名木を堕落させようだなんてどうでも良かった。なんでもいいから俺のこと、俺の過去、絵のことを知っている人間とは関わりたくはなかったのだ。部室まで走るうち、俺はいつの間にかぐちゃぐちゃに泣きはらしていて、通りすがった学生たちにぎょっとされたりもしたが、俺にはそれは分からない。
***
「おっ、唯月一人か? あのエリートくん、マジでヤリサーに入れんのか……って、うお!?」
部室に着くなり俺はレジュメをばさっと机に投げ捨てて、ソファーでまた懲りずにエロ動画を見ていた三白眼の王子に、勢いよく伸し掛かって跨がる。王子は目を白黒させて、机の方の椅子でお菓子を食べていたメガネとカロリーも困惑して俺の様子を覗っている。
「唯月お前、どうして泣いて……?」
「セックスしよ、王子」
「へっ」
上のシャツのボタンを乱暴に割り開いて、俺は下にはいたホットパンツを下着ごと下ろす。俺の肢体に王子はごくりと唾を飲み干して、しかしと俺の、顔の方に手を伸ばしてきた。
「何だよまさか、エリートくんに苛められたのか?」
「そう、だから慰めて」
「マジで? あのエリートくん、だって唯月のこと庇ってたじゃねーか」
「煩いな、詳細は省略。いいからさっさと勃たせて」
「うぐっ」
乱暴に王子のズボンからブツを取り出して、生のお尻の割れ目でぐりぐり擦る。割れ目に吸い付かせて、ぷにぷにした玉でぐりぐりすると王子のそれは簡単に、一日何度でも勃起する。王子は同級の中でも一番の絶倫だから、結構ちょうどいいのだ。涙でぐちゃぐちゃの顔でにまっと笑って王子を片手で固定して、それから今日もよくほぐれたアナルの入り口に『ぷちゅv』と押し付ける。
「おいおい唯月マテ、ってぇっ!?」
「くはぁっっvv」
ずぷぷv と、それを勢いよく根元まで挿入、腰を下ろしていく。下ろしきったらまた腰を上げて、ずるる、と先端まで抜いては再び根元まで飲み込む。王子が『はぁっv』と気持ちよさそうな息を吐くのに満足して、俺はぺろりと口の端を舐める。
「王子ってば、チョッロいよねぇv 俺のナカ、そんなにイイ?」
「チッ、くそ! わけわかんねーけど、やられっぱなしでいられるかよ!!」
「きゃんっv」
腰をガッと掴まれると、王子が俺を腰で突き上げだす。激しく性急な俺たちのセックスに、メガネとカロリーは一旦ポカンとしてお菓子を食べる手を止めて、それからやっとゴクリと息をのんで近づいてくる。ムッツリスケベのメガネが勝手に俺の乳首を舐めて、吸って、ガチホモなカロリーは俺の男性器にしゃぶりつく。いつもの4Pに俺は頭を空っぽにさせる。しばらくピストンすると王子が俺にナカだしして、さすがに萎えたそれを俺は抜き取って、さて次はどっちの相手をしようかと舌なめずりをしては、ふと気が付く。
「あれっ、そういや午後から、先輩たちは講義?」
「はぁっ……あー。先輩方は、合コン、」
「合コン?」
「唯月も良いけど、たまには女の子とも遊びたいってよ。薄情だよな」
「!!」
完璧に、先輩方も全員堕としきったと思っていたのに。先輩方もこいつらも、ヤリサーの皆全員俺の、虜だと思っていた。少し熱が冷めた俺の頬に、王子が半身を起き上げて手を触れてくる。
「つっても俺は、俺たちはもうお前でしか勃たねーから。唯月、なぁ……」
先輩方の裏切りを思って青くなっている俺の顔に、王子の三白眼が近づく。そう、王子は俺に(今までしたこともない)キスしようとしたのだが、俺がまだ王子に跨って尻から精液をこぼしている所、バタンっと部室の扉が開いた。ほとんど裸で男に跨っていた俺ははっとして、王子から顔をそらして出入り口を見るとそこには……、
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