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4.スーパーダーリンと、お兄ちゃん②
立ち上がった名木におもむろに身体を抱きあげられる。俺のフェラで火がついてしまったらしい名木はきょろきょろして、『こっちか』と教えてもいないベッドルームに俺を抱いたまま入っていく。ベッドを見つけると俺をそこに縫い付けて、それから俺に覆いかぶさってキスをしてくる。さっき(部室で)のは軽いものだったけれど、初めてだっていうらしいのに名木は舌までつかって俺の口内を蹂躙する。じゅるっ、じゅvと舌を吸い上げられて俺は目にハートマークを浮かばせて、しかもその合間にシャツのボタンを外されて、下穿きも一気に脱がされた。おかしい、おかしいぞ。初めてだっていうからここは、俺がリードしてメロメロにしてやろうって思ったのに。名木はずいぶん手慣れた様子で話が違う。俺を脱がし終わって、一旦キスを止めて、『はぁっ』と息を吐いて自分のと俺の性器をまとめて擦り上げだした名木に『ちょ、ちょっv』と俺は聞く。
「まっ、ひゃv なっ、なぎっ、初めてだって!?」
「はあ、だから、勉強はしてあるんだ。心配ない」
「べっ、勉強って!? え、えっっv」
「君に痛い思いはさせない、安心してくれ」
それってやっぱりテニスと同じで見よう見真似で、セックスのことも勉強した通りにやるってこと!?
「ちっ、因みにそれっ……男同士のこと、何で勉強っ、あv」
「ゲイビデオでだけれど、問題あるか?」
「ひっ、くぅっv はっ、やっv おっぱい弄りながら擦っちゃvv」
言葉通り名木は俺のぺったんこなでもぷくりとかわいらしいピンク色の乳首を携えた胸を、くりくりくりと弄ってくる。それも真剣な顔で。それがとても恥ずかしい。男前顔に男前に抱かれることが、こんなに恥ずかしいことなんて思いもしなかった。みんな皆、過去の男たちは俺を、おもちゃみたいにしか扱わなかったから、大事に大事に俺を気持ちよくしてくる名木が、恥ずかしい。
「ケツも弄っていいか、唯月?」
「ばかっ、馬鹿っv それ普通聞く? って、あんっv」
「聞いていたより柔らかい。指に吸い付いてきて、なんだか愛おしいな」
「やっ、やぁっっお尻弄りながら感想とかっv あくっv そこ前立腺だからぁっvv」
「こりこりしている、唯月。ここが君のイイトコロなのか」
「ぅんっv はぁっっv そぉっ、そこっv そこで俺っ、メスになっちゃうのっv」
俺の両足を肩に担いで俺のケツ穴を弄る名木は、やはりハジメテだなんて信じられないくらいに、巧い。『そうか』と淡々とした言葉がやっぱり恥ずかしくて、俺は身体をよじって逃げようとする。するとずいっと足を下ろした名木が俺の顔に迫ってきて、
「唯月、どうして逃げる?」
「はぁっv だって、らってぇはずかしっ……v」
「君が誘ってきたんだろう? 俺はもっと待つつもりだった」
「ひくっv そういうならっ、もっ、待ってv」
「もう待てない、止まらない。好きだよ、唯月っ」
「ひっ、ぐっっv!!?」
キスをされたと思ったら、その隙に挿入された。もちろん男性器には慣れているけれど、それは想定外の太さで長さで、俺は『っv!?』とハートと疑問符を飛ばしっぱなしだ。しかも、しかも最中名木は何度も、
「はっ、はぁっ、唯月、唯月、好きだ、好きだ、」
「ずっとだ、ずっと。ずっと愛してる、今も、昔も、これからもずっと愛してる」
「もう絶対に離さない。君が誰とセックスしようと、俺だけを忘れられないようにしてやるから」
などと甘い甘いあまーいセリフを何度も何度も囁いてくるから、そのたび俺はキュンキュンして、胸がキュウっとなって、頬は火照って感じまくって止まらなかった。
「こんなっ、こんなのっっ、はじめてぇっっv なぎ、なぎぃっっvv」
「聞こえてる、唯月。俺はここにいる」
「もっとぎゅってしてぇっv 優しくしてっっv もっともっと優しくしてっvv」
「ああ、もっともっと優しくする。唯月、好きだ、可愛いよ」
「ふぅ゛っv んんっv んっ、でひゃうっv でちゃうぅうっvv」
「全部出せ、唯月、全部吐き出していい」
「ふっ、ぅんっっvv!!?」
何度も何度も、射精させられた。ドライでまでいかされて、何度も中出しされて、名木は王子以上の絶倫で乱交慣れしている俺でもぐったりで、気が付いたら日が暮れていて、カーテンの外は暗くなっていた。やっと満足した名木の隣でぐったり横たわっている俺の頬を、こっちも服を脱いだ名木は愛おしそうに撫ぜてくる。
「唯月、満足できたか?」
「……はー、もう、マジでおなか一杯デス」
「俺は上手く、できていた?」
「そりゃもう……初めてって嘘? ってくらいに、」
「俺は君に、嘘なんかつかない」
「例えだよ、例え」
「そうか」
ぐったりもぐったりだけれど、こんなに愛されたのは初めてだった。胸が身体がぽっぽとやっぱり火照る。いつも乱暴に、高校時代の初めての時からずっとそうだった。俺は男たちの玩具でしかなかったのに、名木は俺をまるで一人の人間みたいに、愛しいものみたいに甘く抱くから、俺も自我を持ちたくもなるってものだ。これじゃあ俺が名木をハマらせるのではなく、俺が名木にハマってしまう。危機感を覚えて、優し気な名木をじっと見上げては目をそらす。それでも名木はビッチな俺を、優しい眼差しで見つめてくる。今日だって他の男とセックスしていた俺だ。っていうか今日初めて言葉を交わした俺たちだ。名木はずっと俺のことを知っていたらしいけれど、俺は名木のことを、今日初めて一人の人間として認識したのだ。そんな男に愛を囁かれてキュンキュンして感じまくったりしたりして、ヤリサーの姫が聞いて呆れる。思って『はー』とため息を吐いている内も、ちゅっちゅと名木は俺の顔にキスの雨を降らせてくる。そんな折であった。
ピンポーン。
インターホンが鳴った。俺ががばっと起き上がって、壁掛け時計を見やると今は午後六時。兄ちゃんが、仕事を一段落させる時間だった。約束はしていないけれど、この部屋に来る人間は兄ちゃん以外にいない。焦ってベッドから飛び起きて、ちらばった衣服を急いで次々身にまとっていく俺に、まだのんびりしているが、こっちも服を着始めている名木が尋ねてくる。
「もしかして、誰かと約束を?」
「違う! けど、たぶん兄ちゃんだ、」
「阿須間京介?」
「そう! 兄ちゃんって真面目な人だからっ……名木は取りあえず、寝室から出てこないで!?」
「……わかった」
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