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第6話

尖った石に足を取られながら、半刻ほど歩いた先に見えて来たのは、ごうごうと流れ落ちる滝。 「どうやらここで終わりみたいだな」 「きゅ〜(秘石はどこにあるのかな)」 しばらく辺りを探して回ったけど、それらしいものは見当たらない。 谷は相変わらず薄暗くて不気味な様子で、ホントにこんな所にスゴい力を持つ秘石なんてあるのかな…、と疑いを持ちはじめたその時。 「エナ!いまの見たか!?鳥が滝の向こうに入っていったぞ」 「きゅっ!(じゃあもしかしたら向こうに洞窟があるのかも!)」 「きっとそうだ!入ってみようぜ」 ボク達はせーので滝の中に突っ込んだ。 「ぷあっ、やっぱりだ!」 「きゅう〜(う〜びしょびしょだよう)」 ぷるぷると体を振って水気をきる。 洞窟は思ったよりもずっと狭くてすぐ奧の方まで見渡せた。中は外よりも一層薄暗かった、なのにボンヤリと周りの様子がわかるのはなぜだろう。 「エナっ!あれを見ろよ!」 「きゅっ!(ああっ!)」 洞窟の奧に祭壇のようなものが見える。そこには呪符が貼られた大きな石が祠ってあって、その石がボンヤリと光を放っていた。 「間違いないあれが秘石だっ!」 「きゅう〜(やったあ!見つけたんだねボクたち)」 「よおっし!早く精霊を解放して力を分けて貰おうぜっ」 「きゅうっ!(うんっ、でもどうやって解放するの?)」 「う〜ん…とりあえずこの呪符を剥がしてみるか?」 「きゅうきゅあ…(でも大丈夫かなあ…閉じ込められるなんてホントにいい精霊なの?)」 「なんだよっ!弱虫エナ!お前は力が欲しくないのかよっ、オレはなにがなんでも手ぶらでなんか帰らねえぞ!」 「きゅっ!(ボ、ボクだって!)」 「よし、じゃあやるぞ…」 「きゅう…(うん…)」 ボクが見守るなか祭壇に近づいたハイカが、そっと秘石に貼られた呪符をくわえて剥がそうとする。だけど呪符はちっとも剥がれない。 「なんで剥がれないんだよ!」 「きゅ〜(なにかまじないとかかけてあるのかな…)」 「んぎーっ!」 ハイカが必死に噛み付くけど、呪符は剥がれるどころか破けもしなかった。 「あーっもう!交代だエナ!お前もやってみろ」 「きゅ…(う、うん…)」 やっぱりちゃんと呪法師の人とかに頼まないとダメなんじゃないのかなあ。 そんなことを考えながら、ハイカの早くやれってプレッシャーに負けて、ボクも呪符をくわえた。 そのまま手前に引くと、呪符はパラリと剥がれて下に落ちた。 「きゅ?(あれ…剥がれた?)」 呪符は下に落ちる途中で灰みたいになって、パラパラと消えてなくなった。それに気を取られていると突然、洞窟の中に声が響いた。 『やれ嬉しや、忌々しい呪法がやっと解けたわ』 声は洞窟の中に木霊するけれど、姿はどこにもない。 『我の戒めを解いたのはそなたか?神獣の幼子よ」 「きゅ…(う、うん…)」 『ほう…、そなたのその毛並み…なるほど、そなたの力であれば呪符など容易い事よの』 なにを言われているのか分からないけど、なんだか嫌な感じがする。 これはもしかしたら秘石の精霊の声? 『我を解放しに来てくれたのであろ?呪符を剥がしてくれたおかげで話しが出来る。さあこの忌々しい石を壊しておくれ』 「きゅ…(壊したらどうなるの?)」 『我はここから解放されて自由になれるのじゃ、もう三百年もの長き時をここで過ごした。幼子よどうか我を解き放っておくれ』 「きゅう…(でも…)」 本当にこの精霊さんは解放していい人なんだろうか?さっきからする嫌な感じが、どうしてもボクに頷くことを拒ませる。 「石を壊して解放したら、オレ達に力を分けてくれるか!?」 いままで黙っていたハイカが突然、秘石の精霊に向かって叫んだ。 『力が欲しいのかえ?』 「そうだ!オレに炎の加護の力を与えてくれっ!オレは強い神獣になりたいんだっ」 『ふふっ良かろうよ、約束しよう。ただし代償は頂くよ?』 …代償…? 「エナ!早く秘石を壊して精霊を出して力を分けて貰おうぜっ。そろそろ帰らないとセレンやチビ達に心配かけちまう」 そうだボクも夕方までには帰らないとシーグさんが心配しちゃう。それでなくても最近ずっと心配かけちゃってるのに、これ以上心配させたくないよ。 『さあ幼子よ、早くやっておくれ』 精霊がボクに囁くハイカも早く早くと急かすけど、どうしてもこの精霊を外に出すのは躊躇われた。 「…きゅうっ!(ハイカ!やっぱりよそう?他の方法を探そうよ)」 「はあっ?なに言ってるんだよ!解放させれば加護の力を与えてくれるって約束してくれたんだぞっ」 「きゅきゅっ!(でも駄目だっ!この精霊には頼っちゃいけない気がするんだ)」 「なに訳わかんない事を言ってるんだよ!」 ハイカと言い争いになる。だけどどうしても駄目だって、ボクの中のなにかが叫ぶんだ。 『…幼子よ。我を解き放ってくれぬのなら、今ここで代償を頂くよ?』 暗く冷たい響きを帯びた精霊の声が木霊した次の瞬間、ボク達は岩肌に叩きつけられた。 「きゅうっ!(痛っ!)」 『さあ早く我を解放せぬかさもなくばもっと苦しむ事になるぞよ?』 「ぐ…っあああああ〜っ!」 「きゅーっ!?(ハイカっ!?)」 精霊の冷たい声が木霊した途端、急にハイカが苦しみだした。

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