【えちぅど】ビターチョコレートスープレックス

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 渡す、渡さない。渡す、渡さない。花占いみたいだ。花占いに任せられるくらい潔かったら、と思わなくもない。

 

 

 カゴにチョコレートを放り込む。子供舌め。俺は甘いのは好きじゃない。味覚までお子様なお前が悪い。俺は味見なんかしないからな。

 

 あいつはペンケースもカバンにジャラジャラうるさいのもなんでもかんでもカラフルだ。靴なんて蛍光マーカーみたいな色をして、虹色みたいなミサンガもそろそろ変な色になっている。俺のはまだまだ綺麗な色をしているのに。
…それはそれとして、カラフルスプレーもカゴに入れる。

 


 不毛だ。不条理だ。俺ばかりあいつのことを考えて。ジャンケンで負けた方がバレンタインチョコレートを渡す。俺たちなりの惚気-コミュニケーション-で、あいつの気紛れ、俺の苦手科目。つまり駆け引き。冗談と取るか、本当に期待していると読むか。あいつは甘い物が好きだ。チョコレートなんて一番好きだろう。ケーキもいつもチョコレート。喫茶店でもココアだった。ソフトクリームも茶色かった覚えがある。色々覚えているな、俺のほうばかりよく覚えている。俺はコーヒーにミルクは入れないし、目玉焼きには塩がいいのにあいつは醤油をかけてくる。コーヒーは甘たるくされて、だってあいつはコーヒー牛乳しか飲めないんだから。

 

 俺ばかり覚えていて、俺ばかりあいつのことを考えている。当たり前だ、俺から惚れたのだから、それくらい覚えてないでどうする。とにもかくにも負けたのは俺。惚れた時から負けていた。勝ってもどうせ、貰えるのか貰えないのか、一喜一憂して、本当に花占いまでしかねない。


 レシピのメモを片手に、材料を追っていても出てくるのはあいつのことばかり。既製品に目が移りかけて、どうせ俺が作ったことも分からないならそれでもいいかと思いはじめる。いやいや、ここで分からせないでどうする。その子供舌に叩き込んでやる。俺はお前を理解しているのだと。


 望み通り板チョコを俺みたいにドロドロにして、別に変なものは入れないけれど、お前が一度受け入れた俺の面倒臭いトコロを全部注ぎ込んでやるからな。

 

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800字後半

 

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