テルアビブオンファイア 感想 ネタバレ
パレスチナで殺されたお父さんのお葬式で泣く少年。
ツイッターで流れてきたそれを見て泣いてしまいました。
お父さん、お父さん
そう泣く少年が可哀想で。
奪われたなら悲しいよね。
大好きな父親か死んだ痛みはわかります。
肉親の死の悲しさは。
それがまして、攻撃されたからだったなら。
悲しみだけではすまないでしょう。
それは私でははかりしれないほど辛いことです。
そのパレスチナのコメディ映画、テルアビブオンファイアをあえて見てみることにしました。
主人公のラキームはイスラエルの公用語ヘブライ語に堪能です。
だから叔父のテレビ局で、ドラマの敵役が遣うヘブライ語の発音指導兼、雑用係として働いています。
そこで製作されているドラマ、「テルアビブオンファイア」は反ユダヤ的な内容ながら、ロマンチックなラブロマンスに、パレスチナ人以外のイスラエル人たちも夢中です。
パレスチナのスバイである女性が、イスラエル人の将校に近づいて、まあ、ハニートラップをしかける話なんですが。
ドロドロのメロドラマです。
ラキームはドラマのセリフについて考えていて、つい、検問所のイスラエルの女性兵士にセクハラ発言と取れる発言をしてしまい、連れていかれます。
そこで出会った検問所の責任者の軍人は、妻がテルアビブオンファイアの大ファンでした。
妻に「ロマンチックがわからない」と言われたていたこともあり、
つい、そのドラマの脚本家だと嘘をついてしまったラキームに興味をもちます。
結末はどうなるんだ、知りたがる。
おまけにイスラエルの将校と女性スパイを結婚させろ、と、無茶ぶりして。
ドラマにめちゃくちゃ口出ししてきます。
検問所です。
捕まることもあるわけです。
怯えるラキームはとにかく、安請け合いで引き受けて、なんとか検問所から出してもらえます。
で、恐る恐るその軍人の案をテレビ局でだしてみると、それが採用。
おまけに脚本家にまで昇格。
ドラマも単なる敵役ではない将校のキャラがうけて大人気。
意外なセリフのセンスにラキームは脚本について検問所ので軍人と相談するようになります。
意外と軍人もノリノリで。
ただ軍人はラストはゆずりません。
イスラエルの将校とパレスチナ人が結婚するラスト。
これこそが、和平だ
これこそが、未来だ。
そうしろ!!と。
検問所なんかにいるのはもう嫌だ。
俺だって平和が欲しいんだ。
だけど、ラキームもそう簡単には従えません。
確かにラキームも思っています。
抵抗と降伏しか道はないのと?
いや、ラキームこそ願っています。
イスラエルに占領されない世界を知らないラキームだからこそ。
でも、ドラマを望む結末にするために、銃をつきつけ、命令し、誘拐までする軍人のいう和平と、従うしかないラキームの望む平和は明らかに違うのです。
こうしたら上手くいくんだからそうしろ。
二人を結婚させろ。
銃を突きつける軍人。
結婚なんて有り得ない、そう言うパレスチナのドラマ関係者たち。
ロマンスにどれだけ心を痛めても、そんな結末は受け入れられない、と。
パレスチナ人のヒロインとイスラエルの将校は結婚させれないと。
最後はヒロインが結婚式のブーケの中にかくした爆破スイッチを爆発させて終わるという結末に決まるのですが。
もちろん、そうなったならラキームは将校から酷い目にあわさせられます。
将校はイスラエルの将校とパレスチナのヒロインのハッピーエンドしか考えていません
ラキームは板挟みです。
だからラキームは考えたのです
ここからがネタバレ
ドラマはずっと続くんだ。
終わることなく、パレスチナのように。
脚本仲間の言葉です。
ラキームは物語を続けることにしたのです。
ヒロインが、将校をあいしてはいても爆破スイッチを押そうとした時、結婚式を司るラビ(ユダヤ教の聖職者)がそれをはばみます。
「お前の正体は分かっている!!」
なんとラビはイスラエルの将校でした。
しかも、詰所の軍人が演じている!!
そう、ラキームは軍人の望んだ通りの結末、愛し合う二人を結ばさせて、それを、イスラエルが引き裂くと言う結末に書き換えたのです。
自分が引き裂く分には軍人はOKでした。
軍人は妻の好きだったドラマに出て大喜 び。
しかも、軍人は次回作の主人公の1人に。
そう、軍人を辞めて俳優になったのです。
検問所が嫌になっていましたし。
詰所の軍人ではなくなったので、もうラキームも安心です。
そして、テルアビブオンファイアはつづきます。
キャストを変えて。
パレスチナとイスラエル。そしてその間で引き裂かれるもの。
それはずっと続くのです。
何度も結末を迎えながら。
パレスチナは終わらないです。
何度イスラエルに引かさかれても。
なにがあっても。
ラキームの選んだ結末こそが、リアルなのだと、思います。
結末を決めるのは簡単です。
でも、現実は終わらないんです。
銃を突きつけたところで終わらないです。
終わらないものとして向き合うしかない。
結論のために物語を歪めるのではなく、また続く物語のために進んでいくしかない。
面白いというだけではすまないコメディでした。
良かった!!!