ツーリスト 6

 

ツーリスト 6

隣の女性は機内サービスが始まると、飲み物だのなんだの俺に話しかけながらキャビンアテンダントとのやり取りをする。
前のモニターの扱いもわからないといちいち俺に聞いてくる。

もっと忌々しいのは、前の席もそのビジネスマンが飲み物は何にするか、とかやり取りを介している声に小さく応える彼の声が聞こえることだ。

高度が上がり、雲の合間から海が見えるようだ。勿論通路側の俺の席からは見えないけど。
窓側の席に変わった彼は景色を楽しんでいるのだろうか。温もりが去った今、慰めはそうだったら良いと思うことだけ。