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二番目(前)
エントランスからの呼び出し音が鳴った。いそいそと操作パネルに駆け寄る。
幸彦がカメラに向かって手を振っている姿が画面に映っていた。即、ボタンを押してエントランスのドアを開ける。
エアコンよし、座布団よし、飲み物よし、おやつよし、自室のベッドよし、バスルームよし、と指差し確認をしてしまった。
程なく、玄関のインターフォンのボタンが押された。玄関で待ち構えていた俺はロックを外し、ドアを開ける。
にこやかな幸彦が立っていた。
「上がって」
「お邪魔しまーす」
幸彦がそこにバッグとコンビニの袋を置いて、スニーカーを脱いだ。その体に腕を巻き付け、俺はキスをする。
「せっかちだなぁ」
一度息をついた俺に逆にキスをしてきた幸彦に言われたくはない。
改めてリビングに案内する。
うちは4LDKだ。だが、ダイニングテーブルは置かず、リビングのローテーブルで食事をする座布団生活を送っている。だからリビングは広く感じるはずだ。俺の部屋はリビングの右側、左側の畳の部屋は母さんのタンス置き場で、玄関挟んだ左右二室がそれぞれ父さんと母さんの部屋と、家族三人部屋を持っている。両親が別の部屋に寝ているのは仲が悪いわけではなく、生活時間の微妙なずれと部屋に対する趣味が違いすぎるためらしい。
「相変わらず見晴らしいいね。最上階なんてものすごい贅沢じゃない?」と外を見ていた幸彦が振り返った。
うちは11階建てマンションの11階にある。最上階であることに両親はとてもこだわったらしい。しかも、目の前が幅の広い川で対岸に高い建物はない。覗かれる心配もない。
「上階の音に悩まされたくないというのが理由らしいよ」
子どもの頃の俺が下階を悩ませなかったかどうかはわからないが、少なくとも両隣の音はしないのでそこそこ防音は保たれているだろう。
俺は冷蔵庫に向かった。
「どうする? 何を飲む?」
「それより、勉強する? おやつにする? セックスにする?」
さらっとそれを混ぜてくるあたり、幸彦も昨日のすみれさん騒動で鬱憤がたまっているらしい。キスでちょっと気分も落ち着かなくなっていた。
「セックスで」
幸彦がふふふふっと笑った。
浴槽に湯を張っている間に例の薬剤を使う。俺だけじゃなく、幸彦も使う。どちらがどちらに入れるかの問題ではなく、前立腺を中から刺激するのが気持ちいいということを幸彦にも体で教え返したから、である。俺たちは快楽に弱く、そして欲張りなのだ。
シャワーを浴びながらボディソープで体を撫で合う。当然もう二人とも腹の方まで硬く立ち上がっている。泡を流してしまって準備はできてしまった。
舌を絡め合いながら、もそもそと話し合う。
「ど、する? いれ、る?」
幸彦が唇をなめてくる。
「この、くちにいれたい」
「えっ」
「何なら、僕から、でいいけど」
舌が離れ、幸彦が俺の前に跪いた。舌の先端がくびれをからかうように左右になめる。熱く柔らかい生き物のようだ。幸彦は割れ目を丁寧になぞってくる。これ以上硬くならないと思っていた自分が初めての刺激に更に熱く太くなって、体の芯まで熱くされる気がした。
先端が幸彦の口の中に迎え入れられた。
そう。今まで二人とも口で相手のをくわえたことがなかった。幸彦はやりたがったが、俺が抵抗していたのだ。
でも、こうして下とは別の熱い体内に包まれて、舌にからまれ、撫でられると足腰にくるものがある。手でこすり合ったときに感じた場所をなめ上げて欲しい。
どうしてあんなに嫌がっていたのか自分でもわからない。幸彦の舌の動きに翻弄されて、今、先端から透明の液体をとろとろこぼしているに違いない。
舌が蛇行しながら裏を這い上がってきて、先端がぱくりと熱に包み込まれた。唇が閉じられて奥の方まで迎えられ、根元を舌先がくすぐるようにさまよう。
「ああ……」
声がこぼれた。大きな声は出すわけにはいかない。換気扇を通じて外に声が漏れたら困る。
俺は浴室の洗い場に横にされ、片脚を浴槽の縁に掛けさせられた。股間が丸見えだ。
決して広くない場所で浴槽に入った幸彦がまた猛っている俺をなめ上げ、なめ下ろし、そのまま縁に掛けた俺の膝あたりを持ち上げるようにしながら両脚の間をなめ始めた。
「あっ、そこっ――」
駄目と言いたかったのに出てこなかった。舌は無遠慮に力強くざりざりと刺激してくる。
興奮すると硬くなるのは包まれた二つの卵形もその間も同じで、幸彦はそこをせめているのだ。
「ゆきぃ……」
なさけない声が出た。もっとなさけない声はその後、幸彦が俺の上がった脚をくぐってからだった。浴槽から身を乗り出した幸彦の舌が、いつものあの穴をなめ始めたのだ。ぶるぶるっと震えがきた。後ろの刺激が前に来る気がする。
幸彦は舌を尖らせ丁寧に襞を伸ばすようにしながら、丸くうごめきながら侵入しようとしている。
「ゆきっ、だめだっ」
止めても間に合わなかった。俺はびくんびくんと体を引きつらせ、精を吐き出してしまった。
「あららら」
幸彦の声にはからかいの響きがあった。常に知識豊富な幸彦がリードする立場にあるせいか、セックスでの俺の立場は弱い気がする。
「駄目っていったのにぃ」
広げられていた股を閉じつつ、上目に幸彦を見る。
「また一つ感じるところがわかってよかったじゃない」
「一回お湯に入る」
高校生男子二人が入るには狭すぎるので、幸彦が浴槽の縁に腰を掛けた。
目の前には、まだそれなりの硬度を保っている幸彦があった。
俺は迷わずそれに食らいついた。
「朔夜!?」
幸彦がびっくりした声を出している。
ざまーみろ。俺だってやるときはやるんだ。
さっきの幸彦の舌使いを思い出しながら必死に奥まで受け入れては舌を絡めて、なめあげる。
幸彦のそれがどんどん硬さと大きさを増す。息づかいも一気にせわしなくなっていくのがわかる。
最後は先端を舌でなめ回し、手で激しく追い上げるというズルも使って、幸彦を強引にいかせた。
「あっ」
可愛い声だ。と思う間もなく、先端から鼓動のようなリズムで、熱い苦いものがまるで押し出されるように口に飛び出してきた。とろみがあるが、予想したほどじゃない。
うわー、これがそうかー。
あわあわしながらも根元から指で絞り上げて口の中に納める。そして決死の思いでごくりと飲み下した。声が出てしまう。
「うげー」
「朔夜? 飲んじゃったの?」
頭の上から声が降ってきた。
「口ゆすがせてくれ」
レバーをひねって湯を出して口に含む。二、三回ぶくぶくしても苦さは舌や喉に残っている気がした。
「朔夜ー」
幸彦に抱きつかれてキスをされた。
「ありがとう、朔夜。うれしい!」
「そうかぁ? ならいいけど」
俺が肉体的にも精神的にもへろへろになっていたので、シャワーを浴びて浴室を出た。
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