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(10)意地悪
佐藤が教室に入ってきて隣に座った。
「今朝は早いじゃん」
「兄貴が珍しく早起きした」
へえと佐藤がノートとペンケースを取り出す。
「それで機嫌が良いのか」
光は佐藤の方を見る。
「俺、そんなに機嫌よさそう?」
「ああ、ちょっと意地悪げだけど、それは地顔か」
「意地悪げか。昔何人かの女の子に言われたな」
「そりゃもう、根本的に意地悪なんじゃないか?」
くくっと笑うと「何だよ」と気味悪がられた。
「いや、昨日は兄貴をいじめて泣かせたからさ」
佐藤の目が見張られた。
「お前、兄貴大好きじゃなかったのか?」
光は笑顔をつくる。
「大好きだよ。兄貴以外家族いないからな」
「ならいじめるなよ。病気なんだろ?」
「兄貴はかわいいんだよ」
「かわいいからいじめるって、小学生男子か」
「じゃ、お前をいじめる方がいいか?」
佐藤が顔を赤くしてそっぽを向いた。
教授が遅れて入ってきた。
光は机の上のスマートフォンを撫でる。
このスマートフォンにパジャマの前をはだけさせられて眠る紫之の写真が何枚もあるのは、光だけしか知らない。
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