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(11)天使のアイコン

 十日ほどでアカウントの凍結は解除された。  アイコンを元に戻して、パスワードを変更した。光がつきっきりで面倒を見てくれた。 「ありがとうね、光」  紫之は久々に晴れ晴れとした気分になった。 「どういたしまして」  早速、誰かにアイコン画像を変えられたことを報告し、次のつぶやきで完成した「ケルベロス」をつぶやいた。  すぐに「いいね」が返ってくる。  久々に味わう喜びだった。 「紫之は美術系に進学すればよかったのかもな。今度のケルベロスも迫真じゃないか」  思わず顔がほころぶ。 「そう? ありがとう」 「アイコンかヘッダーにしたら」 「そうだね。アイコンを天使にして、ヘッダーをケルベロスにする」 「いいな、それ。天使は紫之に似合ってるよ」  光にそう云われて、紫之はアイコンとヘッダーを更新した。 「どう?」  画面を見せると光が笑う。 「いいよ。すてきだ」  紫之は自分でも画面を見る。 「僕は何だかケルベロスに天使が食べられちゃいそうで怖いなって思うけど、光が褒めてくれたからこれにする」 「ありがと」 「だって、いろいろやってもらったもの。こちらこそありがとうだよ」  紫之は机に向き直った。 「これから鋭人さんに、企画展に参加したいって伝えるつもり」 「俺も打ち合わせの時についていこうか」  紫之は苦笑いを光に見せる。 「過保護すぎだよ」 「紫之は病気なんだよ。初めての人と一人で会うの不安だろ?」  鋭い言葉に反論できない。膨らんだ気持ちがしぼむ。 「そう言われると自信なくなってくる」 「よし、決まり!」 「お願いします」  見詰め合った後。笑い合った。

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