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第91話

「なんで、そんなに優しいの」  問いが、ぽろぽろと口を突く。なんで。八つ当たりのように疑問があふれる。 「なんで、そんなふうに、いつも。ずっと。だから、俺が」 「勘違い、したくなるって?」  苦笑気味に発せられた言葉に、かぁっと顔が熱くなる。慣れていないから。言い訳なんて、いくらでもできる。人と仲良くすることに慣れていないから。優しくされることに免疫がないから。  笹原が誰にでもするそれを、自分だけの特別だと都合の良いことを考えてしまう。そんな、馬鹿なことを。  自分でもよく分からないままに首を横に振る。したかったわけじゃない。そんな惨めなことを。 「したらいいのに」  だから、その意味も、すぐには分からなかった。 「したらいいのに、勘違い。それで、俺を好きなんだって、思い込めばいいのに」 「それって」  どういうことなんだろう。はっきりと示してもらえなければ、自分に都合のいい勘違いを本当にしてしまいそうだった。 「分からない?」  窺うように笹原が息を吐く。意地を張る代わりに、乞う。 「言葉で聞きたい」  つまらない見栄もプライド、なにもいらない。ただ、目の前の男の本心が欲しかった。 「おまえの言葉で、俺は知りたい」  たとえ、それが、悠生の望んだ言葉でなかったとしても。ずっと握りしめたままの掌は汗ばんでいた。逃げを封じて、悠生は続けた。 「俺は、おまえのことが、好きだけど」  好きだと誰かに伝えたのは、生まれて初めてのことだった。声が震える。笹原の前で格好が付いたことなんて、一度もない。 「でも、……だから、おまえがそうじゃないなら、ちゃんと勘違いしないようにする、から」  好きだけれど。それを受け止めてもらえなかったとしても、迷惑をかけるようなことはしたくない。時間はかかるかもしれないけれど、また「友人」として隣に立てるようにしたい。けれど、そのためには、ちゃんと答えを知らないといけない。

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