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清川家の兄弟、成良 と明良 は中高一貫校に通っている。兄の成良は高三で、弟の明良は中三だ。
どちらもモデル出身の両親の血を引き、容姿が整っている。成良は凜々しく清潔、学業も優秀で中学から教師にも一目置かれていた。明良は少女めいた容貌から少年らしさへ変化していく時期特有の不安定な美しさを持っていて、既に非公式なファンクラブがあった。
それほどの容姿を持ちながら、父の怜 は二人の息子に来る仕事依頼はすべて断わっていた。
彼ら兄弟は不幸を引きずっていた。次男の明良出産の際、母香奈が大量出血のため亡くなったのだ。
当時マスコミにかなり取り上げられ、疲れ果てた父はその悲劇を売り物にされるのを恐れたのだろう。己の所属事務所の申し出でさえ拒絶していた。
幼くして最愛の母を亡くした成良はしばらくの間言葉をしゃべれなくなった。幸い父が仕事を減らして側にいてくれたことと、母の忘れ形見の可愛い弟の存在に癒やされたのか、程なく言葉は戻ってきた。それでも笑顔は減った。
生まれながらに母を知らない子となった明良の方がむしろ無邪気だった。だが母の部屋の存在を知ると異常に執着した。
時が経てば、子どもは成長していく。
父は妻を失った悲しみを仕事に打ち込むことで晴らすと決めたようだった。明良が三歳ほどになると滅多にこの家に帰ってこなくなった。
ある日、成良が姿の見えない明良を探して家の中を回っていたら、母の部屋のドアが少し開いていた。
「またか」
成良はため息をついた。
「アキ!」
怒鳴りながら入った部屋で、成良は身動きが取れなくなった。
ドレッサーのスツールに母がいた。無論母ではなく、明良だ。だが母の口紅を引いた明良は、薄れかけ、写真を見て記憶をとどめようとしていた母と酷似していた。
「兄様ごめんなさい」
謝る弟の髪を撫で、頬を指でたどり、顎を持ち上げて唇を重ねた。
成良十歳、明良六歳の春のことだった。
その後、成良は明良を伴って自分から母の部屋に出入りするようになった。化粧をさせ、ドレスをあて、キスをした。
大好きな兄と、大好きな母の部屋にいられることで、明良はいつもキスを喜んだ。
母親似の明良と一緒に風呂に入って、体に触れあっているうちに、成良の性への興味は加速した。
精通を迎える前に刺激で硬くなることを自らの体で知ると、弟のそれにも興味を示し始めた。
一緒に入る風呂の中で、成良は弟を膝に乗せやさしくその小さな印 をやさしくしごいた。
「あっ、あ、へんなきもち。そこがじんじんする」
弟がのけぞって息を荒げている。片手で自らのものも刺激を与えた。
「ああっ、何か、出るっ」
「兄様?!」
成良は弟の前で精通を迎えた。
「だいじょうぶ、兄様?」
心配げな弟にキスをする。
「大丈夫だよ。兄様は大人の男になったんだ」
成良は笑って、明良の髪に口づけた。
「アキは? アキはまだ?」
真剣な表情の明良の髪を丁寧に梳く。
「アキは兄様より四つ小さいから、あと四年だな」
「アキも早く大人の男になりたい」
尖った唇に成良はまたキスをした。
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