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決定的な事件は、成良十三歳、明良九歳の夏に起きた。
寝る前にいつものように二人で風呂に入り、成良の部屋で裸で抱き合って眠っていた。
「ここにいたのか、二人とも。心配したぞ」
乱入してきたのは父だった。二人の上に身を投げ出し上掛けごと抱きしめてくる。
「かわいい子どもたち。こんなに香奈にそっくりに育って――」
父は酒臭く、ひどく酔っていた。
「裸なのかお前たち。ちょうどいい。気持ちいいことを教えてやるよ」
なぜ持っていたのだろうか。ジェルを成良の白い尻を割って注ぐと、指でゆっくりとこじ開けた。
「い、痛いです、父様」
「大丈夫だ。ほら、このあたりだろう」
成良の体に電流が走った。それは神経に直接触るような欲望の電流だった。
「あ、父様。そこ、そこ……」
「気持ちいいだろう? 指を増やしてやろうな」
広げられる痛みの後には、必ずそれを越える快感が体を満たした。
成良は涙をこぼし、身悶えた。
「父様。頭がおかしくなってしまいます。体が変」
「それが気持ちいいってことだよ、成良。今度は父様を挿れてやる。アキはよく見ておくんだ。次はお前の番だからな」
「はい」と無邪気に明良が答えた。
父の怒張は成良の体をぎりぎりまで開かせ、前立腺を押し上げ、更に奥にある快楽の扉を繰り返し押し広げた。
「ああっ、いや、こわい、変になっちゃうっ」
シーツの上を転げ回りそうになる体を押さえつけられて、耳にささやかれる。
「男の性感帯だよ。お前は今最高に気持ちいい状態なんだ。いいって言え。気持ちいいって」
「い、いいっ、きもち、いいッ、気持ちいい!」
耐え難い感覚に言われたとおりの言葉を繰り返した。頭より先に体が快楽を認めた。今にも暴発しそうな高まりがより強まっていく。
「いい子だ、成良」
激しく突き上げられ、前をこすられ、成良は絶頂を迎えた。
「ああ、父様っ」
父に抱きつく成良の横から明良がすがりつく。
「父様、ぼくも、ぼくも」
「よし、明良、お前は父様がほぐしてやるから、兄さんに入れてもらえ」
「父様がいい」
むくれてふくれた頬を父が人差し指でつつく。
「父様は上手だから、お前も指で気持ちよくなれるぞ」
「ほんとう?」
あどけない笑顔に父も微笑んだ。
「ああ」
父の笑顔は本当に優しかった。
ジェルが幼い明良に注がれ、父の細く長い指が明良を広げた。
「あっ、いたい!」
明良が泣きそうになる。成良は明良の小さな股間のまだ萎えているそれを口にくわえ、舌を絡めた。
明良の表情が変わった。うっとりと頬は緩み、口が開いている。
「あ、あ、きもち、いい……」
父の指が的確に明良の体内を変えていく。成良の口の中で確実に明良が育ってゆく。
「来い、成良」
明良の開かれた腿の間に成良は呼ばれた。
ジェルをつけた父の手で巧みに育てられた成良の欲望は、明良のほぐされた窄 まりに当たるよう持って行かれた。
「そうっとこの角度で入れてやるんだ」
両手で愛おしい弟の尻を押さえ、ゆっくりと力を込めていく。父は明良を励ましながらキスをしている。
輪を先端が通過した。きつい。きついのが気持ちいい。教えられた前立腺の場所をこすると、明良の体が小刻みに震えた。
感じているのだ、わずか九歳でも。
後は夢中だった。
夢中だったから、父が再び背後に回っているのに成良は気がつかなかった。
「父様?!」
「そのままアキを可愛がってやれ」
成良は明良の体に包まれ締め付けられる快楽と、父の与える激しい快感にまた上り詰めさせられた。
「父様」と成良が父の首に腕を回し、「父様」と明良が胸にすがる。父は二人まとめて抱きしめてくれた。
三人で風呂に入った。三人で体をきれいにして、タオルで拭き合った。そこには笑顔があった。父に甘えることができた。
翌朝、父は二人の顔を見ることなく出て行った。
その後、父は家に戻って来ない。会うのはたまの外食や買い物の時ばかりだ。
兄弟は日々を互いに慰め合いながら、家政婦に世話をされて成長してきた。
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