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たまっていたであろう鬱憤を吐き出すように秀人がまくし立てた。
「生まれ持った身体能力で走る奴らの中で、最大限フォームを直して、直して、足に体重を乗せて回転を上げても上げても太刀打ちできないんだから。時代遅れな前傾フォームだと笑われてもそれしか俺にはなかったんだ。それで走り抜けなければ、奴らには置いて行かれる。だから俺は走ったんだ。子どもの頃から必死になって、研究して。でも、あの時ヒートが起きなければ、転倒さえしなければ――」
秀人が頭を抱えた。
明嗣は訊ねた。
「ヒート? 抑制剤は?」
秀人の体がまた震えだしている。
「あの時もヒートの時期が乱れたんだ。走っている途中で突然ヒートして、転んで怪我して――半月板の損傷と膝の前十字靭帯等の断裂で引退――次の大会の選手を決めるレースだったのに」
「その前に、何か食べ物か飲み物を口にしなかった?」
「飲み物はそりゃ水分補給をこまめにするよう指導されているから……」
「飲んだんだ」と、確認するように明嗣は言った。
「福田さんの――当時の女子マネの用意した専用ドリンクは……」
首をかしげて秀人の目を見つめる。
「その時も今日も、一服盛られたんじゃないの?」
明嗣の言葉に秀人が顔を上げ、ぽかんとした表情で問い返した。
「何を?」
明嗣は聞き取りやすいようにゆっくりと言った。
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