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3.雪の帰り道(後)
終点の駅でバスから解放されて、ここからは徒歩だ。幸い雪は一時的にやんでいた。今のうちに帰り着きたい。
さくさくと音を立てる足元が滑りやすい。そういえばこちらに来て防滑機能のある靴は履いていなかった。天気予報を見たのに初歩的なミスを犯してしまった。一緒に歩く肇も何だか腰が引けていて、笑える歩き方だ。
肇がきょとんと俺を見た。
「何ですか?」
「いーや、何でも」
俺は笑みをかみ殺した。
肇がにこにこという。
「こんなに雪が積もっていたら、雪だるまを作らなくちゃいけませんよね」
「いけませんよねってのは何なんだよ、いい大人が」
隣を見ると肇は目をきらきらさせていた。
「こんなに綺麗な雪が積もっているんですよ。雪だるまを作るでしょう?」
「意味がわからない」
本気でわからない。
「どうしてわからないかなぁ」
肇は肇で、俺のことを不思議がっている。
謎の沈黙が俺たちの間に落ちた。
人気のない歩道を二人で歩いていた時、奇妙な動きをする二人の男がいた。笑いながら足を蹴り上げて雪を飛ばし、足を踏みならすようにどんどんと雪を叩いている。それは少しずつ横へ移動しているようだ。
何をしているのかわからずにいた俺に肇が言った。
「バッグ見ていてください」
その場にバッグを置くと、あっという間もなく雪の歩道を進み、男たちのところへ近づいていった。
俺も肇のバッグを持って後を追った。
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