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4.ミニ雪だるま(1)

「やめろ!」  肇が制止の言葉を口にしている。男たちはゲラゲラ笑いながら足の動きを止めようしない。 「やめなかったら何だってんだよ」  一人が雪を蹴り上げた。が、それはただの雪ではなかった。  肇は一歩踏み込み、相手の服と腕を掴むと、積もった雪の上に投げ落とした。 「何しやがる」  掴みかかってくるもう一人も同じように投げ落とした。 「謝れっ、雪だるまを作った子たちに!」  仁王立ちする肇が腹から出した声は、雪に吸い込まれることなく俺の耳にはっきり聞き取れた。  俺は近づいて、男たちが踏み荒らしていたものの正体を確認する。高さ五十センチほどの小さめの雪だるまだったものたち。それが昔話の笠地蔵のように並べて数体作られていたのだ。  幸い一つはまだ無事だ。  雪を払いながら男たちが立ち上がる。 「何言っているんだコイツ」  肇は低い声で言った。 「作り直せ!」  更に投げようと肇が構えると「つきあってらんねぇ」と吐き捨て、男たちは滑りそうになりながら逃げ出していった。

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