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8.かき氷(前)

 マンションの部屋につくと、すぐに風呂に湯を張った。  どうせ晩ご飯は肇のお気に入り、缶詰のグリーンカレーだ。仕度などすぐできる。  二人で冷えきった体を風呂で温めた。温めるだけならともかく、つい濡れた髪を指で梳きながらキスなどをしてしまう。 「我慢できない!」  叫んで俺の腰に抱きついてきた肇の頭をぽかっと殴る。 「待て!」 「わん!」  反射的に吠えるところは、俺のしつけのせいか?  屈んで肇の目をじっと見つめる。 「俺は腹が減った。お前は?」  言葉より先に肇の腹がなさけない音をもらした。表情も情けなくなった。 「減りました……」 「食欲優先で決定」  俺は肇の先に立って風呂を出た。

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