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10.かき氷(後)

 室内の熱気でどんどん溶けていく雪に、急いでいちごのコンフィチュールの瓶を開け、取り出したいちごとシロップ状の果汁をかける 「いただきまーす」  肇が雪を口に運んだ。 「うまい!」  にこにこの肇が雪をすくったスプーンを俺に差し出した。 「おいしいですよ」  笑顔に勧められて渋々食べる  雪は一瞬で溶けて冷たくて、コンフィチュールが甘くてほっとした。 「確かに、冷たくて甘いな」  なんとなく意地で「うまい」とは言いたくなかった。  にこにこ顔のまま肇が器を引き寄せる。 「じゃあ残りは俺が食べます」  幸せそうに雪を食べる顔に俺は笑みが浮かぶのを止められなかった。 「ごちそうさまでした」  空の食器に両手を合わせたのを見て、洗うための手を伸ばした俺の手首を、肇が掴んだ。 「もう十分待ちました」  俺は洗い残しの食器を諦め、肇に抱き寄せられるままになった。体が冷えている。  唇を重ねると唇も絡めた肇の舌も冷たかった。  それを温めてやりたくて何度も口づけをかわし、体を探りながら二人で寝室に入った。

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