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 遥は加賀谷を見返した。 「その後釜に俺を選んだと、そう言っているのか、あんたは?」 「そうだ」 「あんたの家の、くだらない伝説のために、俺を――俺の体にあんな傷を付けて、父さんの遺言を踏みにじって、繁栄とか言う自己中な理由で、俺を犯して監禁しているって言うのか」 「そのとおりだ」  加賀谷のその答えを聞いて全身が怒りに震え、嫌悪に粟立つのがわかった。  遥は立ちあがった。  自分を見上げる加賀谷の視線を無視して、カーディガンを床にたたきつけた。  この男の与えた物を身につけていることがおぞましい。一刻も早く自由になりたかった。  シャツのボタンをはずし、脱いで投げ捨てる。  加賀谷は無表情だ。  その目の前でベルトもはずしジーンズも下着ごと脱ぐと、加賀谷の顔に向かって投げつけた。 「ふざけるな!」  遥の体はより激しくぶるぶると震えていた。 「人をなんだと思ってるんだ。俺は動物じゃない。あんたにそんな扱いをされる覚えはない」  そう吐き捨てるように言うと、身を翻した。  リビングを出る前に、後ろから抱きすくめられた。 「どこへ行くつもりだ」 「あんたには関係ない。放せ!」 「そうはいかないんだよ、遥」  耳元でささやかれて、背筋にぞわりと怖気(おぞけ)が走った。遥はもがいた。 「俺がどうするかは俺が決める。放せったら」 「もう、そんなことは許されないんだよ、お前は。この(おおとり)を負う限りな」  両手首をひとまとめにきつく握りしめられて、無理矢理加賀谷の方を向かされた。  もがく遥の頬に容赦のない平手打ちが浴びせられた。一瞬意識が遠のいた。口の中に血の味が広がる。 「正しくはお前を選んだのは私ではない。亡くなったあの彫り師だ。一族外の者は避けたかったが、どうしてもお前のこの肌でなければいやだと言い張った。そうでなければ彫らないと。私としては不本意だったが迷っている時間はなかった。守護を失った鳳は非常に弱い。(つがい)でなければ、鳳凰ではないのだからな。それにお前はあの時七・七・七の二十一歳で、伝説に添った年回りだった」 「そんなの俺の知ったことか!」  怒鳴った遥に加賀谷が皮肉っぽく笑った。  遥の背に、手が触れた。  またも寒気が走る。 「やめろ」  背を這い回る手に遥はもがいた。しかし握りしめられた遥の手はまったく加賀谷を振りほどくことができない。  繰り返し寒気に襲われる。 「いやだっ、嫌だ放せ!」  手首を掴まれたまま、無理矢理に歩かされた。そしてリビングを出て寝室のクローゼットの前まで連れて行かれた。

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