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 体の中で加賀谷が動いた。  思考が途切れる。  すべてがそれに支配される。加賀谷に貫かれているという事実に、すべての思考が止まる。  遥は目をつぶって呻いた。快感など全くない。ただ痛いだけだ。弱い粘膜をこすられ傷つけられて、何もできない。  遥の萎えているものに、何かが触れた。  驚いて目を開けると、背後から伸ばされてきた手に包まれているのが見えた。  手は怪しく動いている。  遥の中で、何かが変わる。苦しいことから逃れるために、何かのスイッチが入れられる。 「あ、ぁあ……」  こぼれる声も変わってしまう。  指で先端を弄られ、手のひらに幹をこすられて、遥はもっとそれを感じようとしている。  気持ちいいことに逃げ込んで、打ち込まれたものが与える苦痛を忘れようとする。 「淫乱な体だ」  熱い息とともにささやかれた。  言い返せるものなら言い返したかった。しかし何か言おうとすると、加賀谷のもたらす快感に言葉を奪われてしまう。すべてが喘ぎや、吐息にすり替えられてしまう。 「気持ちいいことがあれば、どんな苦痛も忘れられるんだろう? それとも、苦痛すら気持ちよくなるのか、遥?」  加賀谷が微妙に動く。ちりちりとした痛みも加賀谷の手によって与えられるものに覆い尽くされてしまう。我を忘れてしまいそうな快感に、痛みはむしろアクセントになる。両方を感じることで、自分の体をより意識する。  感じることが、遥のすべてになっている。何もかも意識の外に追い出して、ただ感じるだけになってしまっている。  加賀谷の手に追いつめられて、いかされた。その瞬間甲高い声をあげていた。  加賀谷の体がびくびくっと震えた。  ゆっくりと引き出される時は、苦痛は少なかった。  それを助けてくれた加賀谷の放ったものが、遥の脚をつたう。  虫の這うようなその感触。おぞましかった。  加賀谷が体を離すと、遥はその場に両手と膝をついた。  その遥の前の鏡を遥が放ったものがゆっくりと流れ落ちてくる。男に犯されながら上り詰めた快楽の証だ。 「よくわかっただろう?」  冷たい声が言った。 「お前はもう後戻りできないところまで来てしまった。父親のように自分の性質を認めず、何度もなぶられて、ずたずたにされたいのか、身も心も」  遥は加賀谷を見上げ、にらみ据えた。 「父さんのことを、お前が口にするな。何も知らないくせに、何もわかっていないくせに」 「当たり前だ。他人のことなどわかるものか。私はお前のことがわかるなどと思ったことはない。お前に私のことがわからないのと同様にな」  屈んだ加賀谷が遥の髪をわしづかみにし、遥を上向かせた。  痛みに顔を歪める遥の唇に、身をかがめた加賀谷が自分の唇を押し当てた。  遥はぞっとして、首をねじ曲げてそれから逃れた。  しかしすぐに加賀谷の方を向かされた。  加賀谷の目は鋭く遥を見据えた。 「来週の披露目では、お前は今と同じように私とセックスする。一族の者の前でな」  遥は耳を疑った。 「血縁でないお前と私が『つがい』であることを示すにはそれしかない。いやだなどと泣き叫んだりしないように、ちゃんと今度は催淫剤を使ってやる。安心しろ」  加賀谷が遥の髪を放して、出ていった。  遥は歯を食いしばり、震える自分の体をきつく抱きしめた。

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