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 目が開いたとき、自分がどこにいるのかわからなかった。  ここはどこだ?  桜木に案内された控えの間の寝室ではない。もっと広く、装飾も豪華だ。  シーツの上に身を起こそうとして、腕に力が入らなかった。  腕だけではない。全身がだるく、重い。  パジャマを着せられていた。たぶん体もきれいにされたのだろう。  思い出すだけで、顔が熱くなる。  加賀谷に体の中を抉られただけで――ペニスに触れることなく射精してしまった。 (本当に変態だ、俺は)  そんなことができるとは実を言えば思っていなかった。  ただ、賭けたのだ。加賀谷によって変えられた体と、加賀谷に対する遥の気持ちに。  かすかなノックを聞いた気がした。しかし、自信がなかったため応答しなかった。  ドアが開かれた。  見知らぬ女が目を覚ましている遥を見て、ひどく驚いた。が、すぐに晴れやかな笑顔になった。 「お目覚めでございましたか」 「誰?」  顔をしかめる遥に女はにこやかに答えた。 「この度は御披露目の儀無事に終えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。わたくしはこの中奥で隆人様のお世話を申しつかっております、桜谷さえ子と申します。遥様が凰様となられた今後は遥様のお世話をもつとめさせていただきます。よろしくお願い申し上げます」 「桜木さんたちは?」  遥の言葉に一瞬さえ子の顔に険しいものが走ったのを見た。しかしそれはすぐに笑みに消えた。 「かの者達は御披露目の儀が終わりました後は、遥様の護衛にのみ専念いたします。この本邸に遥様がおいでになる間は、かの者達の役目は特にございません。控えの間としてお使いいただきましたあのお部屋に、隆人様のお情けを持ってみな留めおいております」 「会いたい」  会って、今までのことの礼を言わなくてはいけない。  遥の求めにさえ子は笑みを消して答えた。 「なりません」  遥はかっとなった。 「なんで」  さえ子は静かに、しかしきっぱりと答えた。 「かの者達は本来この本邸内に立ち入ることを許されておりません。この度は遥様の人断ちのお世話役に任ぜられたため、特別にお許しをたまわったまでのこと。そのお役目も終わりました今は退去すべきところを、隆人様のお計らいであのお部屋に留めておるのでございます」 「じゃあ俺があの部屋に行く」  遥はだるい体を無理矢理起こした。  さえ子が慌てた。 「それはなりません。隆人様よりとにかく遥様にはおやすみいただくようにとのお言葉がございました。どうかこのままこちらでお過ごしください」  遥はじろっとさえ子を見た。 「じゃあ、隆人さんの許可を取ればいいってことだな。まずあいつのところへ行く」  遥は上掛けをはいで、ベッドを降りようとした。  が、膝に満足に力が入らず、簡単に転んだ。 「どうかベッドにお戻りくださいませ。どうか、遥様」 「さえ子を困らせるな」  振り返ると、加賀谷がドアのところに立っていた。

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