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翌る朝(8)
「おはようございます。鳳様凰様おそろいのところ、お邪魔をいたしまして申し訳ございません。
凰様にはこちらでご朝食を上がっていただきます。お仕度いたしますので、しばらく騒々しくいたしますが、ご容赦くださいませ」
人の出入りする気配に遥は顔を上げられない。隆人の肩に額を押しつけて、赤くなっているはずの顔を隠す。
隆人は彼らのことをまったく気にかけるようすがない。抱きついている遥の耳に唇を這わせる。
ぞくぞくする。腰からどうしようもない感覚が這いのぼってくる。じっとしていられなくて、もぞもぞと動かずにはいられない。
耳元を笑いにくすぐられた。
言葉も出てこなければ、頭も働かない。隆人にいいようにあしらわれ続けている。
この野郎……
そう思うのだが、体の中に熱が生じてしまっているのは自分が一番思い知っている。それを隆人以外の人間にばらされたくなくて、ただ顔を伏せて隆人にしがみついていることしかできない。できないが、必死に自分の興奮を静めた。
側に人の気配が止まった。
「お待たせをいたしました。お食事のお仕度が調いました」
先ほどの女性の声だった。
隆人から解放された遥が着いた朝食の席は、洋風なものだった。プレーンなオムレツにベーコン、サラダ、コーンクリームスープ、焼きたてのパンにオレンジジュース。それを食べながら向かいに座った隆人から説明を受けた。
「遥、改めて紹介しておく」
隆人の声に遥は二人の女性を見る。
「鳳側の世話係を務めた、樺沢 碧 と樺沢紫 だ。今後も本邸では直接に鳳と凰の世話を担当する」
二人の女性は昨日見かけたのと同じようにきっちりと着物を着ていた。
「碧でございます。鳳様凰様のお世話をさせていただくこととあいなりました。こちらに控えおります紫とともに御前を汚しますこと、なにとぞお許しを賜りたくぞんじます」
今朝二度目の古風で丁寧な言い回しに遥が目を丸くしているのも気づかぬようすで、その場に膝をつき、手をつかえた碧と紫が声をそろえた。
「末永 う、よろしゅうお願い申し上げまする」
二人にそろって頭を下げられて、遥は慌てて下げ返す。
「こ、こちらこそ、よろしく」
それから隆人に向き直ると、質問を浴びせた。
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