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亜利馬、みんなのお兄ちゃんになる・3

「はいっ。それじゃあみんな、画用紙に描いた先生の絵を見せてくださーい!」  エプロンにチューリップの形の名札。「ありま先生」こと俺は、みんなが描いてくれた俺の絵を集めて一枚一枚確認した。 「獅琉くんは凄く子供らしい元気な絵だね。俺の髪型もちゃんと表現できてます!」 「へへ、クレヨンなんて久し振りに使ったから難しかったけどね」  獅琉が描いてくれたのは、ニッコリ笑う俺。ポップで可愛い作風だ。 「竜介くん、めっちゃ凄くないですかっ? これを鉛筆で、この短時間で?」 「高校の時、一瞬だけ美術部に入ってたからな」  竜介が鉛筆で描いてくれたのは完璧な俺の肖像画だった。正直言って画伯レベルだ。額に入れて飾りたい。 「……大雅くんは、うん……大雅らしさが出てるね。独創的」 「久々に絵とか描いた」  大雅の絵はクレヨンの黒だけで描かれた俺だ。体は棒人間で、目と口の部分には穴がぽっかり空いている。 「て、ていうか潤歩くんのコレ何ですかっ? 先生はこういうの許しませんよ!」 「おめぇのイメージっていったら、それしかねえだろうがよ」  潤歩がクレヨンで描いたのは素っ裸の俺が四つん這いになり、後ろから潤歩らしき紫髪の人間に掘られている絵だった。……実際に園児がこんな絵を描いた時、本物の先生だったら何て言うんだろう。 「みんなよく描けてるけど、潤歩くんはちょっと問題アリですね。よって潤歩くんはお仕置きです!」  子供へのお仕置きと言ったら、決まっている。 「お尻ぺんぺん十回の刑!」 「はあぁ? ちょ、ふざけんなてめっ……」  絵の中の俺と同じように潤歩を四つん這いにさせ、ペロンとズボンを下ろしてお尻を叩く。 「いでぇっ、やめろてめぇ!」  ぱちんぱちんと潤歩の尻を叩く俺を、他の三人がニヤつきながら見ている。 「いい恰好だね、潤歩~」 「……写真撮る」 「いてっ! やめろっ! この体罰教師っ! 後で覚えてろよてめぇっ!」  ……はぁ、何だろ。  ちょっと気持ち良い。 「はいっ、それじゃあ次は数を使ったお勉強の時間です」  手を叩いて笑顔を浮かべ、「大雅くん」と指名する。 「100から8ずつ引いて行ってみよう」 「100……92……、……」 「時間切れ! お尻ぺんぺん十回!」 「………」  俺は酔っていた。普段は馬鹿にされてばかりの俺が、この四人の上に立てるという優越感に。 「あっ! 獅琉くん、チョコは一人二個までですよ! お尻ぺんぺんです!」 「ええっ、そんなの今聞いたんだけどっ?」 「竜介くん! 大雅くんとイチャつくのはお家に帰ってからですよ! お尻ぺんぺん!」 「ここは俺の家だがっ?」  ここぞとばかりに、俺は目をぎらつかせながらイケメン先輩たちのケツをぺんぺんしまくった。  ぞくぞくする。何だこれ、何か変な気持ち! 「悪い子はケツを出してくださーい!」 「あ、亜利馬……じゃなくて、ありま先生、っ……」 「こ、怖いぞ亜利馬先生……!」 「こいつ、目がトんでやがる……」 「……亜利馬お兄ちゃん、またの名をケツバット先生……」  そうしてお昼ご飯を食べる頃には既に、四人はすっかり大人しい良い子になっていた。

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