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亜利馬、みんなのお兄ちゃんになる・4
みんな、俺に叱られないようにお行儀よく食事をしている。メニューは園児の一人である獅琉が作ってくれたクリームシチューだ。あったかくて甘味があってほっこりしてしまう美味しさ。ついでに一口フライドチキンもたくさん揚げてくれて、美味しいロールパンもあるし実に最高のランチとなった。
「はあぁ、美味しい! 幸せ……」
「ありませんせーが気に入ってくれて、俺も嬉しいな」
「ありま先生、口にクリームが付いてるぞ。ほら、ティッシュ」
「……ありまお兄ちゃん、俺のニンジンあげる」
俺の機嫌を損ねないようにあれこれ言ってくれる園児たち。だけどそんな中、潤歩少年だけは睨むような目で俺を見ていた。
「チビが調子に乗りやがって……」
「潤歩くん、何か言ったかな?」
「な、何でもないよありま先生! ね、潤歩!」
慌てて獅琉がフォローに入り、俺と潤歩は同時にプイとそっぽを向いた。
「はい! ご飯も食べたし、次はお歌の時間にしようか!」
「ありまお兄ちゃん」
獅琉が手をあげ、ニコニコ顔で発言する。
「どうしたの、獅琉くん?」
「えっと、俺が通ってた幼稚園では、お昼の後はみんなでゆっくりするお昼寝タイムがありました。先生が本を読んでくれて、みんなで横になって、すっごく心地良い時間だったよ」
「そ、そうなの? じゃあお昼寝タイムの方がいいのかな……」
「デカい毛布なら何枚かあるぞ」
竜介が既に用意してくれていた毛布を見て、俺は目を輝かせた。カシミヤ羊毛の高級毛布。暖かくてもふもふで、包まれたらすっごく気持ち良さそう……。
お腹がいっぱいになったのもあって、毛布を見ているだけで眠くなってくる。
「……そ、それじゃみんなでお昼寝にしようか!」
「やったー!」
リビングの広いスペース。絨毯の上へ四人が各々転がり、暖かい毛布を被る。全員ぽかぽかの幸せそうな顔だ。
「お、俺も……」
「あっ、ありまお兄ちゃんは寝たら駄目だよ。絵本を読んでくれなきゃ」
「えっ?」
「先生ってそういうモンだよなぁ。園児そっちのけで昼寝する先生なんてソッコーでクビだぜ」
潤歩がニヤつきながら言って、俺はむっと口を閉じた。
仕方なくスマホを取り出し、絵本のサイトを開く。
「じゃあ本を読みますよ。みんなが寝たら俺も寝ます」
「……先生って昼寝するの?」
大雅の言葉を無視して、俺はスマホの絵本を読み始めた。
「むかしむかし、ある所に三匹の仔豚が住んでいました。仔豚の兄弟はお母さんに言われてそれぞれの家を作ることになりました」
「………」
「みんな寝るの早っ!」
静かに寝息を立てている四人の大きな子供達。その心地良さそうな寝顔を見ていると、本物と比べたらデカさは違えど「幼稚園の先生もいいな」という気持ちになってくる。
「……それじゃ、俺もお邪魔して……」
毛布の端っこを捲り、中へ体をねじ込ませる。みんなバラバラに寝ているから毛布の中で何本もの脚がぶつかり合っているが、こんなのももう慣れっこだ。
もふもふの毛布、気持ち良い……。
「………」
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