2 / 119
0-1
あれは、学者が調べたと読んだ事があり。
“刷り込み”と云うらしい。ま、調べた動物が鳥類で、ガチョウを使った実験。
僕も一度試しみたいと思ったが、対象となる動物を何にしようか三年ぐらい悩んでいる。
どうせなら同じ哺乳類にしようかなんて考えているが、両親が許してくれるか解らないので保留。
そんな事を頭の中で思惟しながらシェークスピアの物語を生で見せてもらった事を僕は感謝している。
何故なら、オペラは始めて観て、感動した喜劇の一つだから。他にもあるだろうと思うかも知れないけど僕の中では『真夏の夜の夢』は衝撃的だった。
こんな話を書いてみたいな…。
僕はそう思いつつ、読んでいた本を閉じて、椅子から立ち上がる。
今から綴られていく物語は少し甘く、切なく、悲しい話。それは僕の過去に秘められし淡い淡い物語として紡がれていく。
甦っては消えていく泡沫の様な恋…。
初めて貴方を瞳に映した時、僕はまだ幼い子供だった。天界では珍しく、雨色にも似た、銀糸にも似た髪色に母親譲りなのであろう異なる瞳が特徴的。
顔は、どちらかと言えば父親譲りだと断言したいけど、多分幼い顔付きから大人の顔になれば母親譲りが出てくるのであろう。
十六歳の僕が言うのだから、間違いなく二人の遺伝は何処かで繋がっている。
窓から見える景色を見ながら、晴天な空を見上げた。
目映い光が木々に射し込み色んな世界を彩っていく。こいゆう日は、小鳥の囀りが耳に入ってきて、穏やかな気持ちにさせてくれる。
精霊達が軽やかなステップを踏みながら踊っているのを過去の自分は映したのだろうか。
ふっと、風が吹き、僕の長い髪を掠めていく。
開きかけの本は閉じる事を許されないままページを捲られていった。
其処には。
白い家に一人暮らしている青年…。
ー…靉流・G・フィニアが記した本があった。
ともだちにシェアしよう!