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第2話:紅い月の吟詩

ー天界・レイ・光皇城・白鷺の庭 辺りに光が射し込む。 此処は、光皇城の白鷺の庭である。普段は誰も立ち寄らない場所だからこそ、姫神の許しを貰って屋敷を造った。 静閑さがあり、感じの良い場所だったので決めた。 白鷺の庭は正に彼好みだったと言える。雨の日は静寂さがあり、酒を煽る。 晴天の日は小鳥の囀ずる声を聞きながら精霊達が踊っている姿を見るのが何より楽しみだ。 あれは、たまに見る光景。 それから見物と云えば、やはり彼女の声を聞いた時は奇跡に近いだろう。ま、気紛れで此の庭を散策する暇さえあればの話だが。 何せ、滅多な事が無い限り光皇城には顔を出さない。 それが、彼の“靉流”(あいる)の為になっているのかは不明だ。 しかし音楽に引き寄せられるのは遺伝らしい。下界で広げられたオペラを観た時に、感動したと呟いていた。 あの屋敷には靉流一人しか居ないのに、何故、解るかって? それは、な…。 靉流が独り言を呟いていたのを俺が小耳に挟んだからだ。 漏れているんだ。 心に呟いていた言葉が、口から。 それが、彼の可愛い所でもある。 「…はぁぁ」 庭先から屋敷の方へ視線を向けた。 思わず、溜め息が溢れる。 大方、本を読んでいるか、お酒を煽っているか、はたまた大好きなオペラを鑑賞しているかの三択に絞られる。今宵の場合は、オペラを鑑賞しながらうたた寝といった所。 椅子に座り、窓から入る風に当たりながら、オペラの肝心なシーンに突入した辺りから彼は閉じていた瞳を開く。 「で、夢を見ていたと…連絡してくるんだ。言の葉の乗せ方教えたんだがなぁ」 俺は手で髪を掻き上げ、遠くに居る息子に困った表情を向けた。 見える筈も無い顔をしたって、可笑しいだろうが。敢えて、浮かべてみる。 時折、息子が脳裏に話を掛けてくる。

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