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息子の頭は精霊という助っ人が棲んでいる。 クルクルパーマの男性だけど。 笑わせてくれるのよね…。 ー…羅綺(らき)。 可笑しい話が沢山で、つい、時間を忘れるとか。 物語を書く時に助言してくれるらしい…。 『こいゆう感じに、加えてみると面白いぞ』と態々、教えてくれたって報告を受ける。私が写っている写真を眺めながら、異なる瞳を細めて、嬉しそうに話す姿。 彼は、オペラの話を書きたく、日々文章と没頭している。 どんな物語を書きたいのか、既に決まっているの。 幼い頃から心は『真夏の夜の夢』の様な話を執筆してみたいのだと…。 だからか、本が沢山溢れ返っているのよね。 「ふふふっ…」 思わず、微笑みが溢れてしまう。 靉流らしい想像力が出ていて、中々の出来だと思う。これは、彼も負けてられないんじゃないかしら。 幼い頃にお互い瞳に映した瞬間から廻り始めた歯車。 奏でる音色は歪む事なく、可愛らしい音。 少しずつ歩み寄っていく姿が悶絶過ぎて、貧血になってなければ良いけど…。 ー…相手が。 以前、鼻血垂らして大変な事になっていたから、心配。靉流の愛らしい姿を妄想していたのが原因だと暴露していた。 母親である私の前で吐く科白だろうかと思ったけど、素直で良いと感じたから無礼講ね。 「あれ、素よね。彼、好青年に見えるのよ」 今にでも『ー…そうであるか』と聞こえてきそうな瞬間。 父親の方も彼の事をどう思っているのか、不思議。好青年というのがツボなんだけど、静かに見守るのを選んだみたいだし。 私も、賢明な判断として見守る方を選ぼうかしら。 なんて父親の様に同じになってしまうわね…。 再び、笑いが溢れてしまう。 此処は、オベロンに頼んでみたくなったわ。 私の息子、靉流の描く小説に触れてみて欲しいと。

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