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物語の内容がメルヘンチックでワクワクさせられた。 今じゃ、母の手元にあるから読めないが…。 あれは子供が楽しむ為にある気がしてならないんだけど、書斎部屋から持ち出したのバレて以来、厳重に保管された。 貴重で文章が隠されているなら仕方無いか。 古代語を解読しながら、幼き頃の事を反芻している場合じゃないが、この文章…。 どっちに当てはまるんだろう。と、首を傾げた。 古代天界語? 魔界語? ー…冥界語か? 本を見つめ、字と睨めっ子をする。 「…羅列を並べたら、古代天界語もいけなくない。でも、魔界語かな?」 ペンを走らせながら、考えた。 父親に冥界の月は銀色だと聞いた事がある。彼は、天界の月は知っているが、他の國の月を眺めた事が無かった。 だから、紅い月というのは妖しい雰囲気が漂っていそうなイメージが高い。 といっても、魔界の月が妖しいかは不明だが、あくまで想像だ。 見た事が無いのだから、例え様がないのが惜しい感じがしてきた青年はちらりと、母親の写真を見た。本に書かれてある“紅い月”の映像をこう流してくれたら、解りやすい。 「ー…無理かもなぁ。母様は魔界の月を映像で見せる様な真似はしないし…」 各言う青年も、態々、危険な場所に足を運ぶ事はしない。 何圏かあるのは把握している。 それに…迷子になったら大変。 写真から目を逸らし、彼は本へ視線を戻す。 「えっと…次は…」 このまま古代天界語で読む事にした。 間違っていても後から添削してもらおうと、青年は思った。 たまに忘れてしまう事があるが、脳内住人という助っ人がいる。彼は教えてくれるだけじゃなく、解りやすく紐を解いてくれるんだ。 的確なアドバイスをもらえるかも知れない。 そんな事を悠長に考えながら、頭の中で、これから起きる展開を想像する事にした。

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