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何ていう物を息子に渡しているんだと、最初は目が点になった。 ま、本を解読する事と小説を書く道を選んだプレゼントなんだけど。タイトル、見るからに妖しいんだ。 本が勝手に開いて、文章が出てくるシステムって、何時の時代に作ったんだろうと思った。 けど、母様なりの…。 お茶目さなんだろう。 本の中に引きずり込まれた事を想定して作ったんだろうけど、呪文が習った物と全然違った。 難しい文章で解読不可能…。 一度、父様に送ってあげようと思ったが良心が『止めておけ』と止めたのだ。 きっと、送った瞬間…。 『何だ!この、矢鱈と長い古代語は!彼奴…俺に…』とパニクるの確定だ。 僕も解読出来ないと判断したんだから、父様は更に母様へ直談判するだろう。『古代語だらけの呪文とか、何世紀前の文字を使っているんだ!』とか、言っている姿が目に浮かぶ。 それを上手く交わすのが母様で、何処か話をズラしていく。 歪めるのではなく、ズラしていくのが得意なのだ。あれを理解するのが出来るのは長年と付き添って来た者だろう。 言葉隠しが上手で日記という形で文章を隠したりする。 だけど、必要とした時だけ開かれるらしい…。 自分も同じ感じだろうか? 毎日付けている日記に染み込むインクを見ながら思惟するが、書いてて思うのは何時か開かれるのは誰かの運命が回った時だろうかと。 「まぁ、今は僕自身のだけど…」 閉じる事を許されないまま、毎日一ページずつ捲られていっている。 そして、照らし合わせた本と文章をゆっくりと口ずさんでみた。 「“この物語は、とある男性が描いた真夏の夜に起きた出来事である。真実を知る勇気はあるかな?グラーデンの血筋を引く御子よ…”。んっ?」 一瞬、クエスチョンマークが浮かんだ。

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