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彼はポカンとした表情になり、思わず、瞬きをした。
『何で、ハンドルネームを知っているの?』とか『どうして、本が喋るんだ?』など無しに、ビックリさせられた。
もう、この本凄すぎる!!!
「僕、靉流・G・フィニアは、読みたい。続きが気になる!」
青年からしては珍しい大きな声が部屋に響いた。
今、此処に両親が居たら驚くに違いない。何時も小さな声音で呟くからだ。
何年かぶりに、腹から声を出した気がする…。
ー…だって。
グラーデンの歴史を知れる。
「父様の家系だよね。普段、歴史を話さないから理由があるんだろうと思っていたけど。こんな形で知れるなら、恐れずに立ち向かってみたいな」
それに、運良ければ、父親の生い立ちが見物出来るかも知れないという彼の悪戯心。
此処に立ち寄った時に、延々と語ってやろうと決心した。
彼処の本屋…。
偶然なる必然だな。
たまたま立ち寄った本屋で待っていたのだから。
本を書いた人物の悪戯か。はたまた、既に用意されていた舞台か。
それは、読んでいってみないと解らない世界だ。
青年はごくりと、唾を呑み、緊張の証とも言える心の臓がバクバクするのではなく。ワクワクする方の心が躍り出しそうな気分になった。
こいうゆう感覚、何だっけな?
ー…躍跳感(ちょうやくかん)?
「ー…久しぶりの感覚で、少し一躍しそう。精霊達が踊りを見せてくれる時に似ているかも…」
研ぎ澄まされた第六感が『見たい!』と欲望を立てている様だった。
次のページを捲ろうと人差し指が動く。
『グラーデンの血筋が甦る…』
ふっと、耳に入った声音は刹那に消えていった。
さぁ、そのページを捲れば…。
君が知りたがっていた歴史が知れる。
“紅い月の吟詩”は。
ー…“グラーデン”の血筋の者。
目映い光が青年を覆っていったのであった。
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