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第三話:精霊の王は、腹黒姫が恐かった(オベロンside)

ー聖霊界・光の川の森 涼やかな風が吹く中、異様に何か黒い空気が儂の辺りを包んでいく。 この空気に触れるのは何年ぶりだろうか。天界でお仕えして、はや三千年以上経つが相変わらず慣れない。 姿、形、変わらないまま転生した彼女しか居ないと解る。 「…嫌な予感がする」 年老いた老人に今更、何をやらそうとしているのやら。 確か、彼女は聖霊界の事には触れていない様にしている筈。 それは、見えない理が存在しているからだ。生まれてきた御子達には語ったりしていると、小耳に挟んだ。 「あれ、主の母親なんだよな。悲しながら…」 『…悪かったわね』 独り言を呟いていると、頭上から声がした。 上を向くと…。 『安心して頂戴。聖霊界には、足を踏み入れない様に秩序を護っていますわ…』 「なっ」 『久し振りに映してみたら、悪口とは…。精霊の王たる者が、随分と余裕綽々です事』 で、出たぁ!!! 儂が、この世で一番“恐怖”と思う女性。 「…何の用ですかな」 『私の息子の小説を読んで欲しくって、了承をもらおうと思いまして…。流石に、無断で聖霊界の空間を通して、小説を送る訳にはいきませんから…』 「はぁ、小説ですか」 『えぇ。凄く、貴方の大ファンで、かの有名なシェークスピアが書いた『真夏の夜の夢』が大好きな子でしてね…。是非、出演した精霊の王オベロンに読んで欲しいと思ったんですよ』 異なる瞳が細まり、微笑む。 変わらぬ姿が健在で何より。 「読んだら、儂の周りを包む黒い空気を消してくれますか?魔界なら兎も角、聖霊界に漂わす空気ではありません…。ん?レイナ皇女?あれ、樹皇女?どっちで呼べば良いんだ!!!」 忘れていた。 彼女の名前をどっちで呼べば良いのか。 昔の好なら、どの名前で呼んでいるんだ。

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