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精霊の王オベロンの妻は、美しい女性で世の男を虜にする魅力を持っていると思う。 彼の『真夏の夜の夢』の素晴らしい世界観は、正に上手く描かれた舞台。 惹き込まれてしまうのも御酸味…。 「困りましたな。儂より、部下の夜の精霊にバトンタッチされては…精霊の王としての名が廃ります。感想を述べる事に、あまり自信ありませんが。読んでみても良いです」 『その答えが聞けて、光栄ですわ…』 「では、ご息子に…小説を楽しみに待っていますとお伝え下さい」 儂を好いてくれているのなら、読んでみようと思った。でなければ、部下からバッシングを喰らう羽目になってしまう。 これは、上司として、精霊の王としての意地だ。 『…それより、年老いた姿じゃなく、昔みたく若い格好の姿のままでも普通に接したのに』 ー…っ、痛い所付いてきた。 だから…。 嫌なんだ。 人の若い格好の姿を突っいてくるから。 何処で見られたのか、さっぱり検討が付かない為に、深い詮索は止めた。あの姿を見られて以来、本来の姿で居る事を心に決めた。 絶対、彼女なら脅しのネタに使って、儂の老後を邪魔するに決まっている。 「あれは…若気の至りで、少し下界の勉強も兼ねて…やっていただけですから…」 『その割りには、随分、イケイケだったと聞いていますよ』 何処の情報網だろう。 儂の若い格好を彼女に教えたのは…。 明らかに、弄る気満々で聖霊界を覗いているじゃないか。 「それはモテる下界の者の流行りに合わせましたから…。当時は…」 話を逸らそうと思惟するが、彼女をあしらう術が見当たらない。 逆に無さすぎて悲しくなってくる。 顔を横に向けながら、小さな溜め息を付いた。 そもそも、あの格好は下界偵察用であって。毎日、やっている訳じゃない。 一度きりだ…。

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